研究課題/領域番号 |
20K20599
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松田 知成 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50273488)
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研究分担者 |
大橋 真也 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (20435556)
武藤 学 京都大学, 医学研究科, 教授 (40360698)
萩原 義久 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 副研究部門長 (50357761)
赤澤 陽子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (50549897)
井倉 毅 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (70335686)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 抗がん抗体 / 抗体配列進化 |
研究実績の概要 |
がんの放射線治療において、まれに患者の免疫が亢進して遠隔転移巣の縮退が観察されることがある(アブスコパル効果)。この時に、患者体内ではがん抗原に対する抗体が産生してる可能性がある。我々が開発した抗体配列進化追跡法は、抗体産生における親和性成熟が生じている局面で、血中の抗体遺伝子配列の経時的な変化を追跡することにより、親和性成熟が進行している抗体配列のクラスターを取得する技術である。我々は4例の食道癌患者の放射線治療期間中に経時的に採血を行い、抗体配列進化追跡法を用いて、放射線治療により活性化する抗体クラスター配列を取得した。 4例の患者のうち、比較的予後の良好な2例の患者については、放射線治療によるIgGやIgAの亢進が観察され、数多くのヒットクラスターを取得できた。一方、予後の悪かった2例については、放射線治療期間中の抗体クラスの変動は少なく、ヒットクラスターもまれであった。患者の予後と抗体産生にある程度の関係があったことを持って、直ちに抗癌抗体ができているということにはならないが、今後の研究を進める上で非常に心強い観察結果である。 我々は予後良好であった2例の患者から17種類の抗癌抗体候補配列を選定し、それらの重鎖と軽鎖の組合せも決定した。これらの人工遺伝子を合成し、重鎖にHisタグ、軽鎖にFLAGタグをつけ、ヒト培養細胞株を用いて、まずは6種類のFab抗体を試作した。残りの抗体の試作と抗体の機能評価は次年度以降の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1年目に、放射線治療により比較的予後の良好であった2名の患者の血液サンプルから、抗体配列進化追跡法を用いて17種類の抗癌抗体候補配列を選定し、それらの重鎖と軽鎖の組み合わせも決定した。そのうち6種類は試作品を完成させている。ここまではおおむね順調に進展していると言える。2年目以降に残りの抗体の試作と評価を行う。
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今後の研究の推進方策 |
得られた17種類の抗体が、がん抗原を認識しているかどうか確認するため、食道癌細胞株、食道癌組織アレイ、患者のがん組織切片、の免疫染色を行う。また、食道癌細胞株の細胞膜タンパク質を大量調整し、試作抗体で免疫沈降して、プロテオームで抗原を決定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
17種類の抗体候補の内、6種類の試作を終了したが、残り11種類の試作がまだ終わっていないので、抗体を試作するための消耗品費を繰り越すことにした。来年度はこの繰越分も含め、順調に使用する予定である。
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