研究課題
一部の癌の抗体医薬品が成功を収めているものの、有望な治療ターゲットは限られているという問題がある。本研究では、独自の抗体スクリーニング法である抗体配列進化追跡法を用いて、新たな抗癌抗体の開発を行なった。この手法は、血中の抗体配列のレパトア解析から、ヒット抗体を高い精度で抽出する技術であり、最も特徴的な点は、抗体スクリーニングに抗原を用いた選択を行わないということである。従って、この方法は抗原が不明なターゲットに対しても有効である。昨年までの研究では、放射線治療を行う癌患者の血液を解析し、放射線治療によって親和性成熟が進行している抗体配列クラスターをいくつか特定して試作した。今年度の研究では、抗体の重鎖と軽鎖の組み合わせを、より精度良くかつ低コストで決定する手法の開発に取り組んだ。具体的には、細胞をin situで逆転写し、cDNAに細胞認識タグを導入することにより、重鎖と軽鎖の組み合わせを決定することを試みた。予備検討として、ウサギの血液を用いて実験を行い、まだ改良の余地はあるものの、細胞認識タグをつけた抗体遺伝子を増幅することに成功し、この方法で重鎖と軽鎖の組み合わせを決定できることを確認した。今後は、この技術を用いて癌患者の血液や癌組織の解析を行い、有用な抗癌抗体を取得することを目指している。この研究により、癌治療の範囲を拡大し、患者の生活の質の向上に貢献することが期待される。
すべて 2022
すべて 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)