研究課題/領域番号 |
20K20603
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
内田 裕之 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (40327630)
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研究分担者 |
根本 隆洋 東邦大学, 医学部, 教授 (20296693)
中島 振一郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (60383866)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | 統合失調症 / AMPA受容体 / グルタミン酸神経系 / ARMS |
研究実績の概要 |
統合失調症は早期発見・早期治療により、より良い予後が達成できることが明らかにされており、近年注目を集めているのが、精神病発症危険状態(At Risk Mental State [ARMS])という、発病前ではあるものの精神病発症のリスクの高い一群である。ARMSのうち約30%が精神病(主に統合失調症)に移行するが、現時点において“移行者”を正確に早期診断する方法はないため治療の遅れにつながり、予後の悪化につながっている。 ヒト脳での興奮性神経伝達は、シナプス後部に局在するグルタミン酸神経系のAMPA受容体により主に担われ、神経活動に伴ってAMPA受容体が増減することで、局所回路の変化をもたらし、精神機能に発展すると考えられている。脳内AMPA受容体密度に基づき、ARMSから統合失調症に移行する者の診断が事前に可能になれば、世界初の物質的基盤に基づく精神疾患の発病予測が実現する。また、新たな機序に基づく治療法開発も可能になる。 そこで、本研究では、AMPA受容体密度をPET撮像により定量し、統合失調症移行するARMS症例、移行しないARMS症例において比較し、移行者の特徴を明らかにすることを目的とした。 また、1H-磁気共鳴スペクトロスコピーは生体内のグルタミン酸などの代謝物質を測定、安静時機能的磁気共鳴画像法は脳領域間の内的な機能結合や脳全体のネットワークとしての性質を評価、拡散テンソル画像は白質神経線維の走行、統合性の構造的評価が可能である。そこで、AMPA受容体の定量化とこれらのモダリティを組み合わせ、グルタミン酸神経系の多面的評価を行うこととした。 リクルートを含めた研究体制は確立され、研究を開始し、令和5年度末までに7名組み入れ、5名の2年間追跡調査が完了した。参加者の脱落はなく、必要とする脳画像データ、臨床情報を収集した。今後、データ解析、論文化を進める予定である。
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