研究課題/領域番号 |
20K20605
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
永井 良三 自治医科大学, 医学部, 学長 (60207975)
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研究分担者 |
相澤 健一 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70436484)
苅尾 七臣 自治医科大学, 医学部, 教授 (60285773)
今井 靖 自治医科大学, 医学部, 教授 (20359631)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | ビッグデータ / 人工知能 / オミックス / バイオマーカ |
研究実績の概要 |
新しい治療法やデバイス、バイオマーカーが相次いで臨床現場に導入されている。しかしその有効性と安全性は必ずしも評価されていない。これをリアルタイムに行うためには、大規模リアルワールドデータを欠かせない。我々は最近、全国7施設の異なる電子カルテ情報を連結して統合するデータ集積システムを完成した(CLIDAS)。また、我々はこれまで様々なクリニカル質量分析装置を活用し、多くのバイオマーカーの測定系を開発してきた。本研究では、臨床ビッグデータとトランスオミックス解析を統合し、新しい心臓病学パラダイムを構築する。具体的には、1)システムを診療用カルテに実装し、臨床研究に用いるには研究用インターフェイスを開発する、2)人工知能(AI)を用いたバイオマーカー探索やそれらを用いた意思決定支援システムを開発する、3)AIを用いた薬剤標的探索、臨床有効性・毒性の早期予測システムを開発する。 研究3年目は1)および2)の条件検討を行った。1)研究用インターフェイス開発:電子カルテデータをSS-MIX形式に書き出した後、循環器内科に入院した虚血性心疾患および心不全患者を対象にMCDRSへのデータ登録および登録されたデータの分析を行った。2)AIを用いたバイオマーカー探索と意思決定支援システム開発:血清の包括的メタボローム解析を行い、生体内の網羅的な分子情報と疾患との関係性を明らかにする。一例として、積極的脂質低下療法の残余リスクの指標となるバイオマーカーを明らかにする。既に積極的脂質低下療法についての2つの大規模臨床試験を実施済みであり、全臨床データと臨床検体が利用可能な状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、臨床ビッグデータとトランスオミックス解析を統合し、新しい心臓病学パラダイムを構築する。具体的には、1)システムを診療用カルテに実装し、臨床研究に用いるには研究用インターフェイスを開発する、2)人工知能(AI)を用いたバイオマーカー探索やそれらを用いた意思決定支援システムを開発する、3)AIを用いた薬剤標的探索、臨床有効性・毒性の早期予測システムを開発する計画である。現在までのところ、1)および2)の条件検討を行い、予備データを得るところまで順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、引き続き、以下の3つの研究を実施する予定である。 1)研究用インターフェイス開発:電子カルテデータをSS-MIX形式に書き出した後、循環器内科に入院した虚血性心疾患および心不全患者を対象にMCDRSへのデータ登録および登録されたデータの分析を継続実施する。さらに、治療の費用対効果をDPCデータやレセプトデータと合わせて分析することで明らかにする。 2)AIを用いたバイオマーカー探索と意思決定支援システム開発:血清の包括的メタボローム解析を行い、生体内の網羅的な分子情報と疾患との関係性を明らかにする。一次代謝物、および脂質メディエーターについてのマススペクトルを取得し、AIを用いて臨床データベースと照合することにより心臓血管イベント予測マーカーをリアルタイムで抽出し、診療意思を決定支援するシステムを開発する。既に積極的脂質低下療法についての2つの大規模臨床試験を実施済みであり、全臨床データと臨床検体が利用可能な状況である。メタボロミクスで炎症性酸化脂質trimethylamine N-oxide (TMAO) が予後予測マーカーとして有用である予備データを得たが、いずれも本研究のリアルワールドデータで脂質低下療法の残余リスクの指標となるリアルタイムバイオマーカーとなり得るか、心臓血管イベントとの関連解析を行う。特定物質についてはさらに合成し、心不全の細胞、動物モデルに投与し、病態への影響も検討する。 3)AIを用いた薬剤標的探索、臨床有効性・毒性の早期予測システム開発:①処方薬剤数・組み合わせと心臓血管系イベントとの関連解析を行う。高齢者のポリファーマシーはイベントと相関するか明らかにする。②心房細動合併冠動脈疾患における抗血栓療法とイベントの解析を行う抗凝固療法の7~8割が直接経口抗凝固薬となった現在、ワーファリンと直接経口抗凝固薬の評価が必要であり、これを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究3年目は、1)研究用インターフェイス開発および、2)AIを用いたバイオマーカー探索と意思決定支援システム開発の条件検討を行った。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、検体を用いた研究の実施が困難であった。このため、当該年度使用予定額の余剰を次年度に繰り越すこととした。
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