研究課題/領域番号 |
20K20606
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
下村 伊一郎 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (60346145)
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研究分担者 |
前田 法一 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (30506308)
西澤 均 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (20379259)
喜多 俊文 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座講師 (10746572)
藤島 裕也 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10779789)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | アディポネクチン / エクソソーム / 間葉系幹細胞 / 免疫チェックポイント阻害 / 急性発症1型糖尿病 / 自己免疫 |
研究実績の概要 |
間葉系幹細胞(MSCs)を用いた急性発症1型糖尿病の治療法を開発した。近年、抗がん剤として免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が注目され、種々の悪性腫瘍に対して使用が拡大している。ICIの副作用として種々の自己免疫疾患が挙げられるが、中でも急性発症1型糖尿病は、膵β細胞を完全に失うことで血糖コントロールは極めて不良となり、合併症の進行、患者のQOL、予後が著しく損なわれる。癌は2040年には年間2890万人が新たに罹患し、その36.1%はICIが適応されると予想されており、ICI投薬患者の約0.5%に1型糖尿病の発症を認めることより、年間約5.2万人に糖尿病が新規発症すると予測されるが、未だ有効な治療法は確立していない。 通常は糖尿病を発症しない雄性NOD/ShiJclマウスに、抗マウスPD-L1モノクローナル中和抗体を投与することで、ICIに誘発される急性発症1型糖尿病が発症するモデルを構築した。本モデルにヒト脂肪由来MSC(hMSC) を投与して糖尿病の発症率および血糖推移を検討し、その有効性を確認し、MSCsの産生するエクソソームがその作用を担う可能性を示した(Diabetologia in Press、特願2021-26666)。 また、アディポネクチン結合パートナーであるT-cadherinは血中にエクソソームの構成成分としてのみならず、大部分は遊離タンパクとして存在し、糖尿病患者群の中でHBA1cなどのパラメータと有意な相関を示すことを明らかにし(Fukuda et al., JCEM2021)、ストレプトゾシン惹起糖尿病モデル等のインスリン枯渇状態で増加し、膵β細胞の増殖を促進する新しい液性因子であることを明らかにした(Okita et al. 投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
補助事業期間を通じて、生理的APNの主要な受容体はT-cadであること(Kita et al., Elife 2019)、APNによるExo産生調節機構(Obata et al., JCI insight 2018)が果たす筋再生促進(Tanaka et al., SciRep 2019)や腎虚血再灌流障害の低減作用(Tsugawa-Shimizu et al., AJP Endocrinol Metab 2021)、間葉系幹細胞治療への応用性(重症心不全:Nakamura et al., Mol Therapy 2020)を明らかにし、新しい内分泌機構としてのExoの位置づけを提唱した(Kita et al., JCI 2019、Kita et al., JB review 2021)。 2021年度では、間葉系幹細胞治療が免疫チェックポイント阻害に誘発される1型糖尿病にも有効であること(Kawada-Horitani et al., Diabetologia in press)。また、可溶性T-カドヘリンは糖尿病病態指標と関連し(Fukuda et al., JCEM2021)、膵β細胞の増殖を促進する新しい液性因子であることを明らかにした(Okita et al. 投稿中)。 このように概ね順調に進展しているが、昨今の研究資材の高騰によって研究資金面では大変厳しい状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
一昨年より、アディポネクチン結合パートナーであるT-cadherinのfloxマウスをPhil Scherer(UCSW)より分与いただき、各組織細胞特異的KOマウスを作製している。さらに昨年度、先端モデル動物作成支援プラットフォームの支援を受けて、臓器・細胞特異的産生エクソソーム可視化マウスを作製した。最終年度である本年度は、本マウスを用いて血中エクソソームの主要な産生組織・細胞を明らかにし、エクソソームが糖・エネルギー代謝、老化などの生命ホメオスタシスに果たす役割とその調節を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は順調に進展しているが、研究費に端数が生じたので次年度に繰り越して使用する。
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