研究課題/領域番号 |
20K20608
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
小林 孝彰 愛知医科大学, 医学部, 教授 (70314010)
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研究分担者 |
岩崎 研太 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (10508881)
三輪 祐子 愛知医科大学, 医学部, 助教 (90572941)
西村 泰治 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 名誉教授 (10156119)
岸 裕幸 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (60186210)
一戸 辰夫 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (80314219)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 / 腎移植 / HLA抗体 / 抗体関連型拒絶反応 / 濾胞ヘルパー細胞 / T細胞受容体クロノタイプ |
研究実績の概要 |
臓器移植後の抗ドナーHLA抗体(DSA)産生による慢性拒絶反応の制御を目的とした研究である。下記5つのプロジェクトに分けて効率的な研究を進めている。令和2年度に得られた研究成果をプロジェクトごとに記す。 【1】DSA産生に関わるCD4T細胞TCRの同定と検証:腎移植直後にde novo DSA 産生を認めた検体を用いて、末梢血PBMCのmRNAを用いて、TCRレパトア解析を行い、複数のTCR候補を同定した。 【2】Donor由来peptide/recipient MHC class II complexに反応するCD4T細胞の検出:ドナーPBMCを貪食したレシピエントdendritic cell (DC)に対するCD4T細胞の反応を解析するELISPOTアッセイ(IFNr or IL-21)を開発した。感作歴のある腎移植例において、早期のde novo DSA産生例では、shared T cell epitopeを多く持つことが明らかになり、PIRCHEアルゴリズムを用いた解析の有用性を明らかにした。【3】ヒト化マウスによるDSA産生責任CD4T細胞TCRの同定と検証(in vivo モデル):免疫不全マウス(NSG)にヒト細胞移入後のHLA抗体産生には成功していない。ドナー細胞との培養後に移入し、繰り返しドナー細胞での感作を繰り返すことでの検出を試みている。【4】DSA産生に関わるCD4T細胞TCRの移植前予測の可能性:上述したde novo DSA産生患者の移植前、後のPBMCを用い、ドナー細胞とのMLR後のTCRレパトア解析した結果、PBMCおよびMLR後において共通のTCRを検出することができた。【5】濾胞ヘルパーT細胞(Tfh)および濾胞制御性T細胞(Tfr)のTCR解析と選択的誘導: DSA産生責任Tfh TCRを同定後、診断だけでなく治療に応用する可能性を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ順調に成果が得られており、計画は予定通り進行していると考える。 5つのプロジェクト研究の中で、【1】DSA産生に関わるCD4T細胞TCRの同定と検証、【2】Donor由来peptide/recipient MHC class II complexに反応するCD4T細胞の検出、【4】DSA産生に関わるCD4T細胞TCRの移植前予測の可能性 においては、順調に進んでいる。 コロナ禍のなか、分担研究者との合同会議をオンサイトで行うことは不可であり、メールおよびZOOM会議(2020/9/28, 2021/3/12)を行った。 開発したIndirect recognition pathwayアッセイの検証を進めること、レパトア解析においてsingle cell 解析を導入し、recombinant TCR(α、β)の作成につなげること、pMHC class IおよびIIのtetramerの作成または、single antigen(HLA class I, class II)発現細胞の樹立を試みることが話し合われ、着手していく方針である。【3】ヒト化マウスによるDSA産生モデルの作成は、十分な成果が得られていないが、移入細胞を工夫することでモデルの開発につなげる予定である。最終的には、【5】濾胞制御性T細胞(Tfr)の選択的誘導をめざし、エピトープ特異的・DSA抗体産生制御の画期的治療法を探求する。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り5つのプロジェクトを中心に研究を進めていく。【1】DSA産生に関わるCD4T細胞TCRの同定と検証、【2】Donor由来peptide/recipient MHC class II complexに反応するCD4T細胞の検出、【4】DSA産生に関わるCD4T細胞TCRの移植前予測の可能性においては、連動した研究が行われる必要がある。de novo DSA産生例で、ドナーPBMC pulsed DCにおける反応性解析(ELISPOT)の意義を検証し、DSA産生に関わるTCR を特定する。移植前予測の可能性について、今まで行ってきたMLRとの比較検討を行う。Recombinant TCR発現培養細胞を樹立し、PIRCHEアルゴリズムで推定されたpeptide候補を用い、peptide-pulsed DCを用い、反応性を確認する。さらに、DSAに関わるB細胞を特定し、EBVを用いて不死化細胞を樹立する。次に、peptide pulse実験に用いるため、COS-7を用いて、 HLA-A02:01, A24:02, DRB1*04:05, DRB1*09:01, DRB1*13:02, DRB1*15:02 (DRA*01:01)など日本人に多いHLA型を発現した細胞の樹立を試みる。 【3】ヒト化マウスによるDSA産生責任CD4T細胞TCRの同定と検証:免疫不全マウス(NSG)にヒト細胞移入条件の改良を行なっており、naiveではなくmemory T, B細胞の移入によるDSA検出を試みる。マウスモデルが困難であることを想定し、HLA multimerを用いたB細胞培養による検出(ELISPOTなど)も試みる。【5】濾胞制御性T細胞(Tfr)の選択的誘導については、nanoparticle(HLA-multimer)の可能性について、検討を継続する。 これらのプロジェクト研究で得られた結果を取りまとめて、学会、論文発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は研究の方向性を見極めるため、物品費および検査費用で消費した。熟練した分担研究者によるアッセイの確立、精度の高い実験結果が必要であり、実験補助員を雇用しなかった。そのため、人件費および学会のウェブ化にともない不要となった旅費が繰り越された。 令和3年度には、研究の方向性が定まり、実験補助員を雇用することにより、精力的な研究が行う予定である。また、T細胞受容体のレパトア解析には、BulkだけでなくSingle cellの解析も追加するため、繰り越し分を物品費、検査費にも使用する予定である。
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