研究課題/領域番号 |
20K20609
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
栗田 昌和 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20424111)
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研究分担者 |
金山 幸司 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40612601)
岡崎 睦 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (50311618)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | アデノ随伴ウイルスベクター / 遺伝子治療 / off target効果 |
研究実績の概要 |
安全性の高さ、生体表現型に及ぼす影響の強さ、から、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を用いた遺伝子治療の臨床研究が急速な広がりを見せている。AAVは遺伝子治療ベクターとして優れた特質を有するが、搭載可能遺伝子長が短い、off-target 効果が強く認められる、など固有の限界を有する。本研究では、局所的原因によってもたらされる難治性病態に対する治療的介入法の開発を目的として、AAVの細胞・組織指向性の改変方法として有用性の知られている定方向進化法を独自の方法で応用することによる大容量AAVカプシドの開発、AAV作用の局所特異性を最大限とする新しいアプローチ法の開発、を遂行した。 既存のAAVカプシドについて、同一のGene of interestを搭載したAAVを作成する際に、AAVカプシドの種類によってパッケージング効率に大きな隔たり、特異性を認めることを確認した。相対的に長鎖配列に対して高いパッケージング効率を有するカプシドの開発を進めるために、新規AAVカプシドバリアントライブラリ作成用のバックボーンプラスミドのクローニングを進めた。 全身的なAAV特異的抗体投与による局所的AAV作用特異性向上の可能性を検討するために、既存のAAVの中でイムノグロブリンによる不活化を受けやすいAAV2について、ヒトイムノグロブリン抗体による不活化作用を調べたところ、濃度依存的にAAV2の作用減弱を認めた。一方、調べ得た範囲のウイルス量範囲では、遠隔部位へのAAV2の作用を認めなかった。 今後は、局所的AAV投与に際して、キャリアを用いることによってターゲットとなる組織に高い特異性をもって遺伝子導入を行う方法論の開発を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初強い遠隔作用を示すことが期待されたAAV2において、期待通りの遠隔作用を認めることができなかった。またAAV2のパッケージング効率が非常に低く、実験的検討に必要なタイターのウイルスを確保することに大きな困難を認めた。これらのことから、当初速やかに検討が可能と考えられていた抗体投与による局所的AAV作用特異性向上の検討を予定通り進めることができなかった。 一方で、プラスミドコンストラクトの作成、動物実験系の確立など、今後の研究開発に用いる基本的な研究準備は当初想定通り進めることができた。総じて、進捗状況としてはやや遅れている、ものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
作成してきた大容量AAVカプシド作成のためのバックボーンプラスミドを用いて作成するAAVライブラリに対して「AAVのパッケージング」による選択圧をかける定方向進化法を行い、既存のAAVでは搭載の困難な長鎖配列を搭載可能な新規AAVの開発を進める。また、皮膚潰瘍面に対する局所的な遺伝子治療を想定し、AAV投与のキャリアとしてゲル素材を用いることによって、遠隔作用を減弱させながら局所的な作用を向上させる、新しい局所的遺伝子導入法の開発を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
人的リソースの不足により、ウイルス作成に遅れが生じた。次年度においては研究人員増加によって研究の加速を図る。
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