研究課題/領域番号 |
20K20610
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉富 啓之 京都大学, 医学研究科, 准教授 (50402920)
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研究分担者 |
上野 英樹 京都大学, 医学研究科, 教授 (50850442)
濱西 潤三 京都大学, 医学研究科, 准教授 (80378736)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | CXCL13 / がん微小環境 / T細胞 / Tph細胞 / 症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
申請者はこれまでにヒト検体を用いた研究より、関節リウマチ等の炎症環境下でケモカインCXCL13を産生する新たなCD4T細胞分画(Tph細胞)を同定しその機能を明らかにしてきた。本研究ではこれまでのT細胞研究をがん免疫研究に応用し、がん組織に存在するCXCL13を産生するCD4およびCD8陽性T細胞の分子機構を解明する。これらの細胞のがん抗原特異性とともに表現型や抗がん作用を明らかにすることを目的とし、さらにその分化機構と抗がん作用を制御することで新たながん治療をめざす。これまでに、婦人科がん(CXCL13の発現が患者の良好な予後と相関していることが知られる)に浸潤するT細胞に対して解析を行った。その結果、腫瘍環境下におけるCD4陽性T細胞ならびにCD8T細胞にはCXCL13を産生する細胞群が存在し、それらはいくつかの分画に細分化された。また、T細胞受容体配列の解析より、腫瘍内CD8陽性T細胞はCD4陽性T細胞と比較してoligoclonalなクローンが増加しており、腫瘍組織環境におけるCD8陽性T細胞の増殖が示唆された。さらに、腫瘍組織のCXCL13産生細胞のうちCD4陽性T細胞はTLS内に局在しするのに対してCD8は腫瘍へ浸潤していたことから、CD4陽性細胞がCXCL13を介して腫瘍内にTLSを形成することでCTLが誘導され腫瘍内に浸潤し抗がん活性を発揮すると考えられた。令和4年度はがん組織に浸潤するCXCL13産生 T細胞によるがん微小環境制御を解明するためにこれらの細胞が産生する液性炎症因子の解析やB細胞の分化機構について解析をすすめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
がん組織浸潤リンパ球のscRNA-seq解析だけでなく、がん組織におけるCXCL13産生T細胞の局在を解析することで、がんにおけるTph細胞によるTLS誘導機構の一端を解明できている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で得られたTph細胞によるTLS形成機構やがん微小環境制御によるCTLやB細胞の分化機構などに関する成果を統合し、Tph細胞によるがん免疫制御機構の全体像の解明を目指し臨床検体の解析やin vitroでの分化系にて解析をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度はこれまでのに取得したscRNA-seqのデータ解析ならびに関連因子の測定を行うことで研究費に対して効率的に研究を遂行することができた。令和5年度は繰り越した研究費を用いてTph細胞によるがん免疫制御機構の全体像の解明を目指す。
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