研究課題/領域番号 |
20K20612
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福本 敏 九州大学, 歯学研究院, 教授 (30264253)
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研究分担者 |
吉崎 恵悟 九州大学, 歯学研究院, 助教 (10507982)
犬塚 博之 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (20335863)
自見 英治郎 九州大学, 歯学研究院, 教授 (40276598)
阪井 丘芳 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (90379082)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | 器官形成 / 歯原性上皮細胞 / 細胞転換 |
研究実績の概要 |
本研究では、器官再生に必要な上皮系細胞の人為的誘導法を開発し、低コストで簡便な器官再生技術の開発を行うことを目的とした。これまで口腔組織においては歯や唾液腺組織に関して、器官原器法よばれる手法にて人為的な器官形成が可能となり、これらの技術の応用により毛の再生も可能となった。しかしその細胞ソースは胎児組織を利用したものや、すでに形成された器官に存在する微量な幹細胞を抽出する方法であり、十分な細胞ソースの確保が困難な状況である。我々は、上皮陥入組織において器官形成の運命決定がどのように行われているかを解明する目的で、上皮組織として歯、唾液腺、毛、内皮系組織として肺、腎臓をターゲットとし、それぞれの器官決定に関与する因子の同定を、cDNAマイクロアレー、RNAシークエンス(RNAseq)、single cell RNAseq,さらにはCAGE (Cap analysis of gene expression)法を用いて試みた。 その結果、歯の上皮細胞が毛への分化を抑制する因子として、Sox21やMed1などの転写因子や転写制御因子の同定に成功した。さらに我々は、皮膚上皮細胞から歯原性上皮を誘導できる新規因子の同定に成功した。この皮膚上皮細胞から人為的に誘導した歯原性上皮を、歯胚間葉細胞と融合することで歯胚を誘導できること、さらに唾液腺間葉細胞と融合することで、唾液腺組織を誘導することに成功した。このことは大量に調整可能な皮膚上皮細胞から、各器官の間葉細胞を得ることで様々な器官誘導が可能になることを示している。現在、人工誘導歯原性上皮細胞の細胞転換メカニズムの解明と、人工誘導歯原性上皮細胞と初代培養歯原性上皮細胞との遺伝子発現の比較を行い、これら器官形成の詳細な分子メカニズムを明らかにする試みを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新たに同定した因子により、皮膚上皮細胞から歯原性上皮細胞の人工的な誘導に成功し、さらにこの人工誘導歯原性上皮細胞から歯胚、唾液腺胚、毛包を形成することに成功した。このことは当初予定していた目標を達成する成果であり、安定して各種器官に誘導する培養技術の確立にも成功した。このことから「当初の計画以上に進展している」と判断した。 また人工誘導歯原性上皮細胞がどのように皮膚上皮細胞に変化したかに関する包括的な遺伝子スクリーニングも初年度に実施することができ、次年度に向けた解析の準備が整っている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
1)内皮誘導器官技術の誘導技術の開発 人工誘導ではない歯胚上皮細胞と各器官由来の間葉細胞とのハイブリット培養により、各器官形成が可能となっていることから、歯胚上皮細胞および人工誘導歯胚上皮細胞と内皮―間葉相互作用で形成される肺、腎臓、肝臓等の臓器形成についても部分誘導が可能となるかもしれない。したがってこれら仮説を証明するため、まずは歯胚上皮細胞と、肺、腎臓、肝臓由来間葉細胞(今回はマウス胎児細胞を用いる)とのハイブリット培養により、各組織誘導がなされるかどうかをマーカー分子の発現を指標に評価する。 2)歯原性上皮誘導小分子化合物の探索 人工誘導歯胚上皮細胞の作成には、増殖因子を用いる方法を検討するが、一方で同様の活性を有する小分子化合物の探索も行う。AmelおよびAmbnのプロモーターにリポーター(GFPやLuc等)を結合したベクターを皮膚上皮細胞に遺伝子導入し、増殖因子Xをポジティブコントロールとして、FDA承認薬剤ライブラリーや東京大学、東北大学等が保有する小分子化合物ライブラリーを添加しスクリーニングを行う。同定された分子を用いた人工誘導歯胚上皮細胞の作成も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の蔓延により、共同研究者との研究打合わせがwebで実施することにより旅費の支出が無かった。また共同研究者との共同研究により実施予定であった研究の一部を双方で分業した結果、一部の実験に関しては実施が困難であり、そのため研究費の使用が減少した。
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