研究課題/領域番号 |
20K20618
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研究機関 | 聖隷クリストファー大学 |
研究代表者 |
森 雅紀 聖隷クリストファー大学, 看護学研究科, 臨床准教授 (10771868)
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研究分担者 |
山口 崇 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (10725394)
田村 恵子 京都大学, 医学研究科, 教授 (30730197)
山口 拓洋 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50313101)
木澤 義之 神戸大学, 医学部附属病院, 特命教授 (80289181)
宮下 光令 東北大学, 医学系研究科, 教授 (90301142)
田上 恵太 東北大学, 医学系研究科, 講師 (50813458)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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キーワード | AI / 緩和ケア / 終末期の苦痛 |
研究実績の概要 |
超高齢多死社会を迎えた日本では、緩和ケアを全国に普及させる画期的な手段の開発が求められる。本研究では、多くの終末期患者の苦痛を緩和するAIプログラムを開発する。 令和3年度までは、最近のAI研究に関する文献・書籍をレビューし、AI研究に関わる医療者・研究者と情報共有を行うことで、緩和ケアへのAIの活用に関する現状把握を行ってきた。緩和ケア専門家の推奨は多岐にわたるが、そのようなAIプログラムの開発や類する研究は先例がないことを確認した。したがって、大規模にデータを取得するに先立ち、対象となる苦痛を絞り、想定したデータ構造から解析が可能か、臨床的に意味のある結果が抽出できるかを検討するパイロットが必要であることを確認した。国内外において特に終末期に頻度が高く、十分な緩和が得られていない苦痛として、痛みと呼吸困難を主な対象とすることを検討した。 令和3年度は、痛みに対する専門的緩和ケアのデータをAI開発のパイロットとして取得した。多施設の緩和ケアチーム・緩和ケア病棟で痛みに対して専門的な治療を行った424人の患者を対象に計1498日分のデータを収集した。入力用のデータとして、登録時情報から得られる変数(74種類)と毎日記載の調査票から得られる変数(AIデータ含め35種類)を用いた。出力用のデータとして行うべき緩和ケアの推奨リストを取得した(16種類)。ランダムフォレスト、勾配ブースティング回帰木、ロジスティック回帰による多クラス分類、ニューラルネットワークの手法を用いて、インプットからアウトプットの予測精度を確認した。その結果、各出力データの出現頻度は概ね低く手法を問わず予測精度は大差ないこと、その中でも頻度が比較的高い項目が本試験での出力データの候補になるという見通しをつけた(定時オピオイドの増量、オピオイドの変更、非オピオイドの使用、鎮痛補助薬の使用など)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
緩和ケアにおけるAI研究の現状分析を行ったところ、大規模にデータを取得するに先立ち、対象となる苦痛を絞ってデータ取得をするパイロットが必要であると考え、まず痛みに対する緩和ケアのデータを取得することにしたため。また、その結果、全般的に出力データの頻度や予測精度が低く、本試験で取得するデータ構造の検討に時間を要しているため。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、痛みに対する緩和ケアのデータの解析を追加し、AI開発として解析可能で、かつ臨床的に意味のある結果が抽出されうるデータ構造を検討する。またパイロットの結果の検討を通じて、非薬物的対応(看護ケアやアドバンス・ケア・プランニングなど)に関しては、患者・家族の価値観が関与することもあり、必ずしも入力データと出力データが対応しないため、AIデータには不向きであることを認識した。したがって、痛みと呼吸困難に焦点を当てて入力・出力データを検討し、調査票を作成する。その上で、データ取得を行う多施設の登録体制を整備する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で国内外の対面形式の学術大会参加や会議がほとんどなくなり、旅費等が発生しなくなったため。また、痛みのデータに関するパイロットの結果の解析と検討に時間を要し、多施設での登録体制の整備は次年度以降に計画することとしたため。
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