研究課題/領域番号 |
20K20622
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
宮本 忠吉 大阪産業大学, スポーツ健康学部, 教授 (40294136)
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研究分担者 |
遠山 岳詩 九州大学, 大学病院, 医員 (00828197)
川田 徹 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (30243752)
杉町 勝 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 非常勤研究員 (40250261)
朔 啓太 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (40567385)
上田 真也 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (40616926)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | 神経性調節 / 体液性調節 / 呼吸調節 / 循環調節 / 糖代謝 / 運動 / 呼気ガス分析 / 13C安定同位体 |
研究実績の概要 |
我々はシステム生理学的なアプローチを駆使し、先行研究にて開発した小動物を用いた実験モデルで運動時の骨格筋末梢循環と糖代謝の神経性・体液性調節メカニズムに焦点を絞って研究を行ってきた。今年度は、昨年コロナ禍、入手が困難だった特定の測定機器と薬品が利用可能となり、頸動脈洞への圧入力を制御する実験システムを構築することで、昨年度の遅れを補うための一連の取り組みを行った。 今年度は運動時の神経性調節と体液性調節の相互作用メカニズムの解明に取り組み、頸動脈洞への圧入力の変化に伴う交感神経性由来の代謝反応、およびノルエピネフリン及びエピネフリン投与による体液性由来の代謝反応の定量解析を行い比較検討を進めた。 5匹の8週齢のオスSDラットを対象に、麻酔下で人工呼吸を行いながら、呼吸ごとに呼気流量と呼気ガスの分析を質量分析計を用いて行った。さらに、糖質の代謝動態を定量的に評価するために、13Cで標識したグルコースを各条件下で静脈投与し、代謝された基質の酸化量を算出した。その結果、頸動脈洞への圧入力の変化にともなう交感神経活動由来の代謝反応の変化は微小である一方、ノルエピネフリン及びエピネフリン投与時には代謝量が著しく増加することが確認された。 これらの実験結果は、運動時における神経性調節と体液性調節の役割とその相互作用メカニズムについての新たな洞察を提供する。この成果を元に、次年度、引き続きこの領域の研究を深め、運動に対する呼吸・循環・代謝動態を説明する新しいモデルの開発と生体恒常性維持のメカニズムに関する包括的な理解を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究はシステム生理学的研究手法を用いて、運動ストレスに対する骨格筋・末梢循環及び糖代謝の神経性・体液性調節メカニズムの解明に取り組んできた。 初年度は動物実験での検証が難しい運動準備期におけるヒト高次脳機能を介する神経性・体液性調節メカニズムが骨格筋末梢循環及び糖代謝機構に及ぼす影響をシステムレベルで明らかにした。 2年目は、我々が開発した小動物実験モデルを用いて運動時の骨格筋末梢循環及び糖代謝の神経性・体液性調節メカニズムの解明に取り組み、安静状態の大腿静脈から低濃度および高濃度の13C-グルコースを投与し、その濃度に応じて13C-グルコースの代謝が活性化することを確認した。また、運動刺激時には心拍数、血圧、酸素摂取量が強度依存性に増加し、13C-グルコースを投与した後には、刺激強度に応じて13C-グルコースの代謝が促進されることを確認した。 3年目は運動時の神経性調節と体液性調節の相互作用メカニズムの解明に取り組み、頸動脈洞への圧入力の変化に伴う交感神経性由来の代謝反応、およびノルエピネフリン及びエピネフリン投与による体液性由来の代謝反応の定量解析を行った。その結果、頸動脈洞への圧入力の変化にともなう交感神経活動由来の代謝反応の変化は微小である一方、ノルエピネフリン及びエピネフリン投与時には代謝量が著しく増加することを確認した。 本来は今年度が本研究の最終年度であったが、昨年コロナ禍、特定の測定機器と薬品の入手が困難であったため、頸動脈洞への圧入力を制御する実験システムの構築に大幅な遅れが生じ、延期申請に至った。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の拡大は本研究の進展に顕著な影響を及ぼし、特に最終年度の実験モデルに基づいた実験回数が計画通りに遂行できない状況を招いた。しかし、本年度に至り、運動時の神経性調節と体液性調節の相互作用メカニズムの解析を可能とする、頸動脈洞への圧入力を制御する実験システムが完成したことにより、今年度は、頸動脈洞への圧入力の変化に伴う交感神経性由来の代謝反応、及びノルエピネフリンとエピネフリン投与による体液性由来の代謝反応の定量解析を継続する 今年度の目標は、実験結果の精度を高めるために実験回数を増やすこと。また、全体の研究結果を再評価し、追加の実験を計画することも視野に入れている。このアプローチは、未解決の研究課題に対する取り組みを効果的に推進する戦略であり、これらの取り組みを通じて、我々の研究が新たな進展を遂げることを期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍研究活動が進まなかったため。
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