研究課題/領域番号 |
20K20623
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
檜垣 靖樹 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (10228702)
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研究分担者 |
高橋 英幸 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ研究部, 主任研究員 (00292540)
冨賀 裕貴 佐賀大学, 医学部, 日本学術振興会特別研究員 (50826394)
上原 吉就 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (70373149)
川中 健太郎 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (80339960)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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キーワード | 筋サテライト細胞 / 糖取り込み |
研究実績の概要 |
我々は、骨格筋の培養実験に広く用いられているC2C12細胞の分化実験で、イノシン酸を細胞培養液中に添加すると顕著な細胞増殖を認めるとともに細胞内グリコーゲン量が増加することを発見した。グリコーゲンは、肝臓、骨格筋、腎臓、脳組織に貯蔵されている糖であり、エネルギー物質である。身体活動・運動+食事による筋グリコーゲン量の増加は持久的パフォーマンスを向上させることも知られている。そこで、我々は、「イノシン酸(IMP)摂取は、身体のエネルギー・チャージを促進する、さらに身体活動・運動との組み合わせは、相加的あるいは相乗的な効果をもたらす」、という作業仮説を立てた。 本年度は、実験1として、マウス骨格筋から筋サテライト細胞をプレプレーティング法により単離して、筋細胞の分化を経日的に観察し、イノシン添加実験の予備実験を行った。また、リアルタイム定量PCR解析に必要なRNAを採取するために、培養する筋サテライト細胞数の調整方法を検討した。さらに、蛍光染色法を用いて、細胞の分化過程を可視化する手技の再現性について検討を加えた。実験2として、マウス下肢よりヒラメ筋を採取し、in vitroのインキュベーション実験系にて放射線ラベルを用いない方法でグルコース取り込みを定量化する実験条件について検討を行った。 その結果、筋サテライト細胞の分化過程での遺伝子発現を定量化するために必要な細胞数は約5.0×105個であること、そのためには、マウス2匹分の下肢筋よりサテライト細胞を単離する必要があることが分かった。In vitroのインキュベーション実験は、実験条件の検討を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筋幹細胞の単離法および細胞培養条件の設定については、概ね順調に進んでいる。今後、COVID-19の影響により、実験施設への入構が制限される可能性もあるが、その都度、実験計画を修正して対応する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、筋幹細胞を用いてイノシン投与が分化促進に及ぼす影響を明らかにするとともに、in vitroでの筋インキュベーション実験を用いてグルコースの取り込み促進の分子メカニズムを探索する。筋幹細胞実験では、C57BL/6Jマウス(雄、8週齢)の下肢骨格筋より筋幹細胞を単離し、培養実験にてイノシン添加有無別の分化促進効果を検討する。 また、in vitro実験においては、マウス骨格筋を試験管内でインキュベーションし、糖の取り込み速度をイノシン酸添加の有無で検討する。加えて、イノシン添加容量依存的に糖取り込みの亢進が認められるか検討する。さらに、その分子メカニズムとしてAICARやwortmanninを用いた薬理実験とAMPKおよびAktのリン酸化を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定されていた学術学会がオンライン開催になり、旅費の支出が減額になったこと、COVID19の影響により研究支援者の雇用を令和3年4月以降としたこと、実験室内での感染対策の徹底および感染拡大を防止するために、実験室使用の制限により消耗品の支出が減額となったことより、令和2年度の使用予定分を令和3年度分として請求した。尚、未だ感染症の終息が見えない中ではあるが、実験計画に基づき研究を遂行する予定である。
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