研究課題/領域番号 |
20K20629
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
向川 康博 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (60294435)
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研究分担者 |
日浦 慎作 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (40314405)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2026-03-31
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キーワード | 光伝播の直接観測 / 単一光子検出器 / 高時間分解撮影 |
研究実績の概要 |
初年度となる2020年度は,単一光子検出器,ガルバノミラー,及び時間デジタル変換器を組み合わせた高時間分解撮影システムを構築し,その計測性能を評価した.その結果,約13ピコ秒単位の高時間分解計測が可能となり,光が約4ミリ単位でゆっくりと伝播する様子の可視化に成功した.このシステムを用いてシーンを撮影することで,通常のカメラでは完全に縮退してしまう時間軸の情報が取り出せることを確認した.例えば,多層構造を持つ物体では各層からの反射を分離して撮影できることを,プラスチックのような半透明物体では表面での反射光と内部に染み込む散乱光を分離して撮影できることを,さらに凹形状では各面と面の間で生じる相互反射が伝播する様子を直接撮影できることを確認した.さらに,これらの高時間分解撮影に基づいた新しいコンピュータビジョン技術開発の検討を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りに高時間分解撮影システムを構築でき,想定していた性能をほぼ実現できた.また,本システムが新しいコンピュータビジョン技術の開発に利用できることを実証するために,対象物体の手前に半透明スクリーンが置かれて,対象物体が鮮明に見えないような2層構造のシーンを対象として,時間情報に基づいて各層の見えを分離し,対象物体を鮮明可できることを示した.この成果は,その先進的な技術が評価され,情報処理学会第83回全国大会において学生奨励賞を受賞した.
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今後の研究の推進方策 |
基本的な高時間分解撮影技術が確立したため,光伝播の直接観測に基づく新しいコンピュータビジョン技術の開発に取り組む.これまで,光の伝播というスケールでは画素値はスカラーであったが,高時間分解撮影では画素値はベクトルとなり,古典的なコンピュータビジョン技術を新しく拡張することが可能となる.その一例として,光伝播の直接観測に基づく相互反射の解析に取り組む.
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次年度使用額が生じた理由 |
複数のカメラメーカーから高解像度SPADカメラ開発に関するプレスリリースがあり,現時点で市販されている低解像度SPADカメラを購入するのではなく,次年度以降に購入したほうが研究が進むと判断したため,次年度に繰り越した.なお,静止シーン限定し,単一のSPAD素子とガルバノミラーを組み合わせて代用システムで基礎実験は可能であるため,研究に遅れはない.
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