研究課題
高濃度の鉛に暴露されても毒性影響が顕在化しない陸生動物におけるメカニズム解明のため、鉛の化学形態解析に注目して大型放射光施設のXAFS解析を環境毒性学分野において応用した。凍結乾燥による試料均一性の増大や鉛濃度の濃縮により、測定制約のあった実験室内投与実験ではない「フィールド由来生物試料のXANESスペクトル」の測定に成功した。野生のラット、トカゲ、ニワトリ、イヌにおける肝臓、腎臓、心臓、脳、肺、脾臓、筋肉、胃・小腸・大腸の内容物、および糞便における鉛形態の違いや、消化器系や体内へ吸収された際の鉛化学形態の変化に関する精緻な知見を初めて得た。トカゲ臓器の鉛のXAFSにおいては肝臓のスペクトルは個体間で差がなく前述のチオール基と結合した鉛と類似したスペクトルを示した。これらは肝臓が重金属の解毒/排出機構においてグルタチオン等の分子を介して重要な役割を果たすことを反映していると考えられた。一方で個体ごとに臓器間でスペクトルを比較すると、肝臓、肺、胃内容物の間で大きな差が見られない個体グループと、肺で特徴的なスペクトルを示す個体グループに分かれた。これらの個体について硫黄のXAFSにも着目すると、肝臓と肺の鉛スペクトルが異なった個体どうしでは肺の硫黄スペクトルが類似しており、またこれらのピーク位置は土壌のものと一致した。このピーク位置は環境中に多く存在する硫酸化合物のものとも一致しており、鉛でも他の臓器と異なるスペクトルが得られた傾向と合わせて、肺では土壌の吸入の影響が大きいことを反映していると考えられた。スペクトルに結合元素や酸化状態ごとに違いが現れやすい硫黄にも着目して解析を行うことで、微細な構造に着目する必要のある鉛のスペクトル解析から得られた暴露経路の推定を補強できる一例であり、この手法は他の動物種や地域の研究でも応用可能である。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 14件、 査読あり 15件、 オープンアクセス 15件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 15件、 招待講演 4件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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