研究課題/領域番号 |
20K20634
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
北出 裕二郎 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (50281001)
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研究分担者 |
溝端 浩平 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (80586058)
長井 健容 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (90452044)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | 昇降式フロート / AI化基礎実験 / 海洋学 / 環境監視 |
研究実績の概要 |
本研究は、海洋ビッグデータを活用し、水平的に移動する機能を持たず流れで受動的に移動する昇降式フロートによる観測を、計画的に流れに乗せて移動させ、能動的に観測するためのアルゴリズムの開発を行う基礎研究である。フロートを計画通りに移動させるには、高分解能・高精度で3次元流速を推定する必要がある。本研究は、衛星海面高度の高分解能補間アルゴリズム開発、高分解能モデル開発と高精度化、フロートの現場実験による検証に分かれており、最終的に組み合わせてフロートの最適な昇降制御アルゴリズムの開発を行う。 2021年度は実験用昇降式フロートの製造が遅れていたことから、当該経費とは別経費の所属機関経費で購入した自動昇降式フロート2基を用いた実験を先行的に実施した。2021年10月上旬に海鷹丸によりフロート2台を黒潮流域に投入し、待機深度調整による実験を実施した。この実験は当該課題の最終年度まで続ける予定である。実験の結果、同地点に投入した2つのフロートは100㎞以上離れるという全く異なる経路を漂流し、その後互いに近づくという挙動を示した。週に1回程度の計測とデータしか得られていないため、今後も継続した実験とデータの蓄積が必要である。 再現モデルの開発においては、この異なる経路を再現するようにHYCOMのデータを境界条件とする数値モデルのチューニングの実施を始めた(継続中)。 一方、船舶による現場実験の実施が困難な状況が想定されたため、これまで当該研究室において多くのデータが蓄積されている南大洋で得られたデータの解析から、自動昇降式フロートの漂流の評価と海洋物理現象との整合性の研究や物理現象と係留データとの整合性の研究を実施した。また、フロートの動きが海洋中規模渦の構造に大きく作用されることから、南大洋の渦運動の特徴をEKEの変動形態により評価した。これらの成果は投稿論文あるいは修士学位論文としてまとめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍における諸々の事項と関連して、現場実験の中止や遅れがあり、特に以下のような遅れが生じている。 (1)実験用の昇降式フロートを発注したが、機器製造会社で部品を調達できず機器の製造が8カ月程度遅れている。当該物品は2022年6月上旬納品予定となっている。(2)海面漂流ブイの現場実験の実施に当たり海鷹丸に乗船したが、入港等に関連した規制により対象海域まで行くことができず現場実験を断念した。
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今後の研究の推進方策 |
現場実験に関して、これまで同一の海域で同時に実施することを想定して計画を進めていたが、成果として得られるアルゴリズムは汎用性があると考えられるため、現場実験はそれぞれ実施できる海域で適宜実験を行い、アルゴリズムの集約により海洋モデル、漂流モデルを改善していくこととする。これにより遅れている現場実験を同年度に並行して実施可能であると期待できる。 海面漂流ブイの実験はこれまで蓄積されたデータが多くある南大洋にて実施し、衛星海面高度から地衡流として推定される流れとの比較を行う。高解像度で海面高度を評価するためのアルゴリズムの開発を行う。このアルゴリズムは、漂流再現モデルのもとになる海洋モデルの境界条件をして適用する。 2022年度6月に納品が予定されている昇降式フロートを用いた現場実験を実施する。実施海域は黒潮流域で、東京海洋大学の神鷹丸により7月から8月に実施することを想定している。 2021年度から継続して漂流再現モデルのチューニングを行い、再現精度が改善され次第、そのモデルをもとにしたフロート昇降制御の最適化アルゴリズム開発に移行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、11月末までに納品可能が完了するように観測機器(昇降式フロート)を発注していたが、コロナ禍による製造部品の調達難により、観測機器の製造・納品が次年度となってしまったこと、機器の導入にあわせて実施を予定していた現場実験が次年度に延期になったことにより、次年度へ繰り越しが生じた。
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