研究課題/領域番号 |
20K20635
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
清 和成 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80324177)
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研究分担者 |
中島 典之 東京大学, 環境安全研究センター, 教授 (30292890)
古川 隼士 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (90632729)
Amarasiri Mohan 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (50815537)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 環境RNA / 環境DNA / 衛生動物 / 感染症対策 |
研究実績の概要 |
本研究では、世界中で度々問題となっている各種の感染症を媒介する衛生動物を、環境RNA分析によって効率的にモニタリングする手法の開発を目的として、【課題1】都市生態系水試料中の環境DNA/RNA濃縮・回収手法の確立、【課題2】標的衛生動物由来環境RNAの特異的高感度検出・定量法の確立、【課題3】標的衛生動物由来環境RNAの特異的高感度検出・定量法の時間的感度評価の3課題に取り組んでいる。 2021年度は標的衛生動物由来環境RNAの特異的高感度検出・定量法の時間的感度評価を実施した。具体的には、河川を想定した流水系実験水槽として4L水槽を3つ連結し(それぞれ上流、中流、下流水槽)、モデル衛生動物としてマンソン住血吸虫の中間宿主貝を中流水槽で7日間飼育後、中間宿主貝を全除去、経時的に各水槽から水試料を採取して、環境DNAおよび環境RNAを回収し、中間宿主貝由来のDNAおよびRNAをPCRおよび逆転写PCRで検出した。検出の時間的感度を中間宿主貝の飼育前後でのPCRおよび逆転写PCRの結果から、空間的感度を各水槽での検出結果の比較から評価した。時間的感度に関しては、環境DNAでは中間宿主貝の除去後も3週間にわたって中間宿主貝由来のDNAが検出されたのに対し、環境RNAでは中間宿主貝除去後2日目には検出されなくなった。また、空間的感度に関しては、環境DNAでは中流水槽に加えて下流水槽からも中間宿主貝由来のDNAが検出されたのに対し、環境RNAでは中流水槽のみから中間宿主貝由来のRNAが検出され、実験期間を通して下流水槽からは検出されなかった。これより、環境RNA解析が時間的にも空間的にも、より高感度な標的衛生動物を検出できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の研究期間で実施を予定している3つの課題のうち、【課題1】都市生態系水試料中の環境DNA/RNA濃縮・回収手法の確立は昨年度達成済みであり、本年度の検討により【課題3】標的衛生動物由来環境RNAの特異的高感度検出・定量法の時間的感度評価も達成できた。【課題2】標的衛生動物由来環境RNAの特異的高感度検出・定量法の確立に係る検討についても昨年度から引き続き検討しており、次年度にはまとめられる結果が得られていることから、順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
【課題1】と【課題3】は達成できており、残る【課題2】について検討を進める。【課題2】の標的衛生動物由来環境RNAの定量性評価については、計画時から想定していた通り、挑戦的な要素が大きな部分であり、検出感度の定量的評価に加え、遺伝子定量結果からの標的生物数推定がどこまで可能であるか検討を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた出張(国際会議、国内学会、研究チームの打ち合わせ会議など)が、全てオンラインあるいは中止となったことを受け、昨年度に引き続き旅費支出が0となったこと、学内の年度限り競争的研究資金が採択され、共通使用となる試薬や消耗品類を一部その予算から調達したことなどが原因となっている。 来年度の研究では、標的衛生動物由来環境RNAの特異的高感度検出・定量法の確立に取り組むが、ここではddPCRによって、これまでに採取、保存してある環境DNA、環境RNAサンプルからの標的衛生動物由来DNA、RNAを網羅的に定量解析するなど多くの試行錯誤が必要になるものと考えており、そのために使用する予定にしている。
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