研究課題/領域番号 |
20K20636
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
小西 輝昭 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学領域, グループリーダー(定常) (70443067)
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研究分担者 |
大澤 大輔 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学領域, 主任研究員(任常) (90324681)
劉 翠華 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線障害治療研究部, 主任研究員(任非) (00512427)
及川 将一 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 物理工学部, 技術統括(定常) (10391301)
小林 亜利紗 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学領域, 研究員(任常) (30773931)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | クロモスリプシス / 細胞がん化 / 染色体異常 / マイクロビーム / プロトン / 細胞核 / 細胞質 / DNA二本鎖切断修復 |
研究実績の概要 |
細胞がん化プロセスの一つであるクロモスリプシスは、一つもしくは極少数の染色体において、数十から数千箇所もの崩壊と再編成がおこる現象であり、この現象の発生機序は染色体における同時多発的な破砕および、その後の異常なDNA修復経路機構によると考えられている。本課題は、マイクロビーム細胞照射装置による細胞核・細胞質への撃ち分け照射技術を活用し、クロモスリプシスに対する細胞質損傷を起因とする防御的な細胞応答の寄与を明らかにすることを目的としている。 初年度は、マイクロビームによるHT-1080細胞の細胞核照準照射による①細胞致死効果の測定、②微小核形成率測定といった基礎的な生物データの取得、また今後マイクロビーム照射後の生存細胞の染色体構造解析を実施するに③生存細胞のクローンの収集を行った。その結果、照射粒子数に対する細胞生存率は、照射粒子数500個までは、指数関数的な減少を示した。平均一致死(生存率37%)に必要な照射粒子数は、218個であり、吸収線量は約2 Gyといった予備的な結果を得た。また、微小核形成率は細胞核当たり300個の陽子線照射で極大を示し、二核化細胞あたり微小核0.15個であった。 次年度以降にマイクロビーム照射後の細胞のライブセル観察を実現するための④細胞株の構築を開始した。具体的には、照射後の細胞の染色体構造変化、特に微小核形成過程のライブセル観察を実現するために、ヒストンタンパク質H2BとGFPの融合タンパク質を安定的に発現するHT-1080 H2B-GFP細胞株を作成した。そして、ミトコンドリアをCOX8AとdsRed2の融合タンパク質で観察可能なHT-nGFP-cDsRed2株も作成した。これらの細胞株のライブセル観察可能にするための蛍光顕微鏡システムも整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題の主要技術であるマイクロビーム細胞照射装置SPICEが設置してある静電加速器棟の近隣において新棟建設工事が開始した。建設工事に伴う振動等の影響し、律速となっている。時期や時間帯の調整が必要となり、予定通りとは言えない。一方で、次年度以降の研究計画方針を決定するための実験データを得ることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロビームによるHT-1080細胞の細胞核照準照射による①細胞致死効果の測定、②微小核形成率測定といった基礎的な生物データの取得を継続して行う。また、細胞質への照射、ならびに細胞核と細胞質の両方への照射についても①と②を行うとともに、③生存細胞のクローンを収集する。
初年度に細胞核照射後得られた③生存細胞のクローンについて、m-FISH法による染色体構造解析を実施する。
作成した④HT-nGFP-cDsRed2株を用いて、ライブセル観察を実現するための顕微鏡システムの最適化を開始し、照射後の細胞の染色体構造の変化等のライブセル観察を実施する。
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