研究課題
昨年度に実施した「ウイルス非蓄積性の牡蠣に特徴的な糖鎖の分析」では,牡蠣の汚染実験でノロウイルス蓄積量が多い牡蠣と少ない牡蠣の間で存在量に有意差が見られた糖鎖の種類が想定よりも多く,特徴的な糖鎖を決めることができなかった。この原因の一つとして,牡蠣に非特異的に蓄積したウイルスに着目し,清澄な海水で牡蠣を浄化するプロセスを強化して汚染実験に再挑戦した。この汚染実験では,昨年度と同じGII.2株を用いて,結果の再現性を確認するとともに,新たにGII.4株も用いて,遺伝子型の違いによる影響も評価した。今回の実験では,ウイルスで汚染された海水中で牡蠣を24時間飼育した後,24時間の浄化処理を行うことで,浄化前の牡蠣に比べてウイルス陽性率は減少した。ただし,牡蠣に蓄積したウイルスを完全に除去することはできなかった。浄化後の牡蠣の分析により,GII.4型よりもGII.2型が牡蠣に蓄積されやすい傾向を明らかにした。遺伝子型に関わらず,高濃度のウイルスで汚染された海水中で飼育しても,ウイルスが検出されない牡蠣個体が確認されれた。同じ水槽内で飼育された牡蠣の中で,ウイルス蓄積量に最大10,000倍もの差が見られ,ウイルス非検出の個体とウイルス蓄積量が多い個体について現在,レクチンアレイを用いた糖鎖の分析を行っている。さらに,過去に東北地方の養殖海域で採取された牡蠣について,ノロウイルスを定量検出し,感染性胃腸炎の流行時期であってもウイルスが検出されない(または,ウイルス蓄積量が少ない)個体を収集した。この個体についても今後,糖鎖の分析を行う予定である。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス流行の影響で,実験室の使用が制限される時期があった。また,研究の遅れを挽回するために博士研究員(研究支援者)の募集を行ったが,適任者からの応募がなく雇用できなかったため。
早い時期に研究支援者を雇用し,研究を加速することで,これまでの研究の遅れを取り戻す。
新型コロナウイルス流行の影響で,実験室の使用が制限される時期があり,実験や分析が予定よりも遅れたため。また,博士研究員(研究支援者)を公募したが,適任者からの応募がなく,雇用できなかったため。予算の繰越分は,遅れている実験や分析と,研究支援者の雇用のために使用する。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Applied and Environmental Microbiology
巻: 87(10) ページ: e02547-20
10.1128/AEM.02547-20
Foodborne Pathogens and Disease
巻: 18(5) ページ: 331-336
10.1089/fpd.2020.2874