研究課題/領域番号 |
20K20643
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池内 与志穂 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (30740097)
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研究分担者 |
ティクシェ三田 アニエス 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (00334368)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | オルガノイド / 可塑性 / 神経回路組織 / in vitro / 学習 / 神経細胞 |
研究実績の概要 |
脳内の回路は複雑であるがゆえに高度な情報処理を行うことができるが、まさにその複雑さが脳の本質的な理解を阻む最大の難関となって立ちはだかっている。そこで本研究では脳内の神経回路を単純化して体外で再現し、学習させ、神経回路の機能と仕組みを理解する事を目指す。シナプスや神経細胞の可塑的変化はこれまで多く観察されてきたが、小さな可塑的変化の集積によって引き起こされる回路全体の学習を体外で達成した報告は無い。本研究代表者らは、脳が機能するために本質的に必須の要素は局所的な回路同士が巨視的につながりあう回路構造であるとの仮説を立て、この構造を持つ神経組織の回路を構築している。ヒトiPS細胞を三次元培養し、分化させると、自発的に発生中の脳のような構造を持った小さな組織ができる。このように幹細胞などから自発的に出来た神経組織は脳オルガノイドと呼ばれているが、細胞が持つ自発的発生プログラムのみによって作られた脳オルガノイドは局所的な回路しか模倣することができない。脳内で離れた領域同士がつながっている組織構造を模倣するために、代表者らは脳オルガノイドから伸びた軸索によって脳オルガノイドをつなぎ合わせた回路組織を作っている。これまでにマイクロデバイス内部で2つの脳オルガノイドを培養し、互いに伸びた多数の軸索がオルガノイド同士をシナプスを介してつなげる手法を確立した。このつながった脳オルガノイドは、つなげない通常のオルガノイドに比べて著しく活発な活動を示すことがわかった。また、この組織に外部から一定の時間間隔で繰り返し刺激を与えると、刺激に応じて可塑性を示すことなどが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、マイクロデバイス内部で2つの脳オルガノイドを培養し、互いに伸びた多数の軸索がオルガノイド同士をシナプスを介してつなげる手法を確立した。このつながった脳オルガノイドは、つなげない通常のオルガノイドに比べて著しく活発な活動を示すことがわかった。また、大脳オルガノイドを二つつなげた組織にオプトジェネティクス手法によって外部から一定の時間間隔で繰り返し刺激を与えると、刺激に応じて可塑性を示すことなどが明らかになった。刺激中断後、神経組織の再度の刺激への応答性は一定の時間増加する様子が見出された。大脳以外のオルガノイドも作製し、つなぎ合わせる手法も開発している。
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今後の研究の推進方策 |
多電極アレイ上に回路組織を作製し、回路組織内の電気活動のダイナミクスを計測する。大脳・腹側視床・背側視床・基底核オルガノイドをそれぞれ多数の電極の上に配置し、互いに軸索を介してつなぎ合わせることで、オルガノイド間で神経活動が共有され、干渉し合う様子を調べる。すでに、二つの大脳オルガノイド同士が接続すると、神経活動頻度をオルガノイド同士が調節し合い、神経活動が同期することを確認している。つながり方(配置・接続の有無)を変化させ、電気活動パターンの変化を解析する。抑制性神経細胞を接続すると神経活動が減少するだけでなく、活動周期を変化させると考えられるが、実証した例はないので実際に活動ダイナミクスにどのような変化が起きるか調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により研究活動が制限されたため。
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