研究課題/領域番号 |
20K20644
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
片野坂 友紀 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (60432639)
|
研究分担者 |
金川 基 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (00448044)
片野坂 公明 中部大学, 生命健康科学部, 准教授 (50335006)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
|
キーワード | 心臓 / TRPV2 / 介在板 / メカノトランスダクション / 心肥大 / GCaMP6s / 血行動態負荷 / 心不全 |
研究実績の概要 |
心不全とは心臓のポンプ機能が低下して、抹消臓器に充分な血液を送れない状態である。わが国では75歳以上の約50%が心不全患者である。発症後の5年生存率も悪く、決定的な治療法が無い。心不全に至る原因や過程は一様ではないが、唯一、高血圧などのメカニカルストレスは共通の引き金である。このため、メカノセンサーを介した心不全発症機構の解明による画期的治療法の確立が期待されている。これまでの我々の研究から、心臓のメカノセンサーの分子実体はTRPV2であり、心臓の形や機能の維持にはTRPV2を介したCa2+シグナルが必須であることが明らかとなってきた(Katanosaka et al., Nature Commus, 2014)。しかしながら、拍動している心臓において、『メカノセンサーを介したCa2+シグナルが心筋細胞のどの部位で生じて』、『血行動態変化に伴ってシグナルがどのように変化するのか』については全く明らかになっていない。本研究では、拍動している心臓においてTRPV2を介したCa2+シグナルを可視化し、心筋細胞内の機械受容機構(メカノトランスダクション)の起点と、その分子基盤を解明する。 本年度は、拍動する心臓で介在板からのCa2+シグナルを得られるか解析するために、既存の心筋細胞特異的TRPV2ノックアウトマウスとGCaMP6sマウスを交配して、心筋細胞にGCaMP6sを導入した遺伝子改変マウスをライン化しているところである。予定通り、産仔は得られているので、もうすこしで実験動物として使用できるマウスが、必要な数得られると考えている。また、介在板を構成する分子のうち、TRPV2と生化学的な相互作用を示す分子を複数同定した。これらの分子について、TRPV2の活性を調節するか、あるいはTRPV2依存的に調節される可能性があるか、細胞レベルで検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存の心筋細胞特異的TRPV2ノックアウトマウスと、GCaMP6sマウスを交配して、心筋細胞にGCaMP6sを導入した遺伝子改変マウスをライン化しているところである。予定通り、産仔は得られているので、令和3年度内に、実験動物として使用できるマウスを必要な匹数確保できると考えている。マウスの開発に予定よりも時間がかかっているものの、予定と異なる方向へ計画を変更せねばならないような問題ではない。また、介在板からのTRPV2を介したシグナル経路を同定するための手段として、介在板を構成する分子のうち、TRPV2と生化学的な相互作用を示す分子を複数同定した。これらのことから、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度に、心筋細胞にGCaMP6sを導入した遺伝子改変マウスをライン化し、実験群として使用するマウスの匹数を確保できるようにする。また、現在同定しているTRPV2と生化学的な相互作用を示す分子について、その局在とTRPV2活性との関係を明らかにし、介在板からのTRPV2を介したシグナル経路を同定する。このための手段として、相互作用因子に蛍光インディケーターを負荷し、メカニカルシグナル依存的な細胞内局在変化をタイムラプスで明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
事情によりGCaMP6sマウスの入手が予定より3か月以上遅れたこと、飼育スペース等の問題でマウスのライン化および実験群マウスの確保に多少時間が要することにより、現在は実験に使用するマウスの掛け合わせを行っている段階である。仔マウスは順調に産まれたところなので、次年度は引き続きライン化して実験群のマウスを確保する予定である。当初計上していた研究費は次年度以降に使用することとなる。
|