研究課題/領域番号 |
20K20648
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
位田 隆一 滋賀大学, 役員, 学長 (40127543)
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研究分担者 |
青井 貴之 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 教授 (00546997)
清水 昌平 滋賀大学, データサイエンス学部, 教授 (10509871)
森崎 隆幸 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (30174410)
須齋 正幸 長崎大学, 経済学部, 教授 (40206454)
磯 博康 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50223053)
神崎 宣次 南山大学, 国際教養学部, 教授 (50422910)
平澤 俊明 公益財団法人がん研究会, 有明病院 消化器内科, 副医長 (60462230)
児玉 聡 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80372366)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | AI / ELSI / 個人情報保護 / 責任 / 仮名化 / 医療機器 |
研究実績の概要 |
前年度と同様、コロナ禍による内外の行動制限や所属機関での業務態様の変化等により、研究の進捗が遅れたままである。現地調査やインタビューは極めて限定的で、海外調査は不可能であった。班会議はオンラインで実施した。 本年度も主として文献の調査・考察及びオンライン班会議、意見聴取・交換を行った。これらを通じて、医療関連AI技術に関する倫理問題の検討状況について、状況把握を試み、研究班内で情報共有し、検討すべき課題について検討し、以下の成果を得た。 (1)AI自体がまだ発展途上であることから、AIの医療現場での利活用もまだ限定的である。もっとも利用されている分野は診断であるが、この分野でのAIの倫理的課題については、①責任(Liability)の所在:a)AIによる診断の正確さ、b)AIが診断する根拠となるデータの正確さ、c)AIが自己学習するに際してのデータの適切さ、d)個人情報保護の過誤、e)本来の目的以外にデータを用いてAIが行う判断から生じる不利益と損害、および②個人情報保護(Privacy):a)AIが診断用いる患者等のデータは機微な個人情報、b)AIが用いるデータの匿名性の確保、c)予期しない形でのAIによる個人情報の活用と診断における個人情報保護、があげられる。この2つの問題は同時にAIの利用における透明性(Transparency)と判断の予期可能性(Expectancy)の問題につながる。 (2)他方で、AIは、診断にとどまらず、医療機器としての利用およびやケアの場でのパラメディカルな利用があり、特に前者には、患者の治療を機械であるAIに委ねることの倫理的な意義、即ち人間である患者と治療者であるAIとの尊厳(Dignity)の問題を含む微妙な関係が浮かび上がった。 以上の成果はいまだ試論のレベルにあり、論文化は難しく、次年度に学会発表等により問題提起を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究計画は、展開途上のAI医療(研究・臨床応用)の現状と今後の展開の方向を現場視察やインタビューにより実際に確認し、その中から倫理的課題を抽出し、全体像を明らかにしようとするものである。 これまで医療分野でのAI利用は画像やデータ等を用いた診断ツールとの位置づけであったが、現場は試行錯誤を経ながらAIの占める場が大きく拡がりつつある。そこでの生命倫理問題は利用される患者の個人情報の保護に関連するものが一般的であった。しかしこれまでの様々な情報を総合すると、現状では、そうした判断機能をはるかに超えて、インフォームド・コンセントの場面での活用、患者の不安解消、病院内の案内、治療法の選択、検査・治療・手術機器での利用、さらに診療データの蓄積と分析にも活用され、単に個人情報の保護を中心的な主題とするのは不十分であることが分かっている。それゆえ、計画ではオンサイトの調査を主軸に組み込んでいた、 それが実際には現場での利用状況や医師や研究者の認識等の確認がかなわず、断片的な情報や地検によらざるを得ない状態が続いており、研究班としても焦燥感を募らせてきた。 そこで、献収集及びオンラインの研究会、さらには関係者によるオンラインでの講演やインタビューなどを駆使することで、ある程度のことが見えてきたと感じている。今年度については前年度よりも進捗があったが、なお不十分である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画を一年間延長して実施する。今年度は前年度に比べ、同時双方向型等のオンラインの活用による研究方法に習熟してきた感があり、次年度については、さらに方法の知見を蓄積、積極的に活用する予定である。また生命倫理を専攻する研究補助者を雇用し、さまざまなロジスティックスの課題も克服できる。これにより、研究班会議や講演、インタビュー、海外との意見交換については後れを取り戻せると考えている。さらに、コロナ禍からの回復の兆しも見えることから、オンサイト調査(現場視察、インタビュー等)については可能な限りの実施を試みる。すでに現地視察や対面インタビュー等の調査に応じていただける関連機関や研究者、関係者には、応諾を得ている。ただし、海外調査については、今後の状況の推移によっては断念せざるを得ないことも覚悟しており、これに代わる効果的な調査方法を検討中である。 また今年度同様、滋賀大学学長裁量経費に基づく研究ユニット構築経費による「生命倫理ガバナンス研究センター」を継続設置する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた関係機関への現地調査、オンサイト・インタビュー、アンケート、海外に赴いてのAI医療関連機関や生命倫理研究・諮問機関等への意見聴取、研究会やシンポジウム開催等がほとんどできなかったため、基本的にオンラインでの研究班会議、調査、講演、意見交換にとどまり、経費の支出が極端に節約された。 次年度は、行動制限がかなり緩和される見込みがあるので、これまでの2年間で実施できなかったプログラムに支出する。特にオンサイト調査のための旅費、成果発表シンポジウム等の会議費、講師・意見聴取等の謝金、研究協力者及び補助者等への謝金、ロジスティクス対応経費等に充てるまた海外調査、国際シンポジウムの費用も可能になり次第使用する。
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備考 |
現状では内容の更新が容易なFaceBookを活用している。
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