研究課題/領域番号 |
20K20649
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
船曳 康子 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (80378744)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | メディア依存 / 発達障害 / MAF |
研究実績の概要 |
本年度は、まず、国際的に頻用されるメンタルヘルス評価システムのASEBAが新たに開発したメディア依存質問紙Media Activity Formの日本版の標準化と妥当性の検証を行い、論文化した。Cronbach のα係数は本人評価で0.90、保護者評価で0.91と良好な信頼性が得られ、Internet Addiction Test(IAT)との0.5程度の正の有意な相関により基準関連妥当性が示された。 昨年度には、本人記入に基づいた、メディア利用時間と意識の関係を、性別、発達障害の指摘歴の有無別に分析したが、本年度は保護者記入もあわせて検討した。「私の子どもはメディアに時間を費やしすぎている」などメディア利用に対するネガティブな意識が、11-18歳保護者(300名:男子63%、女子70%)の方が6-10歳保護者(100名:男子48%、女子50%)より高かった(p < 0.001)。対して、本人記入(保護者評価と対になった11-18歳の300名)では、上述質問(男子51%、女子56%)は保護者よりも低く、「私は、メディアを通して役立つ情報を得る」といったポジティブな回答が目立っており(男子83%、女子89%)、親子間で意識が異なっていた。また、発達障害の指摘がある男子はゲーム時間が長いもののネガティブな意識は目立たず、自覚がない可能性がある。指摘がある女子はコンテンツ制作やWEB閲覧の時間が長くネガティブな意識も見られ、やめた方がよいと思いながらも続けている可能性が示唆された。 さらに、不登校傾向の分析も行った。上記回答者300名のうち、月3回以上欠席、または月2回欠席かつ月3回以上の遅刻がある児童は12名であった。そのうち6名がIAT得点において依存可能性領域であり、その6名は全員が発達障害の指摘をされており、依存可能性のない不登校傾向児童は発達障害の指摘が見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メディア依存に関する質問紙の標準化と妥当性の検証、その論文化を終え、全国調査データの分析に取り組んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
児童のメディア利用データと発達障害、その他のメンタルヘルス、睡眠時間などとの関連を引き続き分析する。また、不登校傾向との関連を調べるために、不登校傾向者に焦点を絞った全国調査にて、発達障害、メディア利用、さらにはコロナ禍との関連を追跡する。とくに、新型コロナウイルス感染症による児童への影響について分析し、それが社会不適応を促進させるのか、緩衝因子はないかなど、発達障害の有無別、性別、メディア利用状況とも照合しながら分析する。 加えて、成人の全国調査データの分析も進める。発達障害傾向、メンタルヘルス、長所やスキル、職業、社会適応との関連について解析し、個別特性に応じた社会適応へのコツを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
運営費を研究や調査に回すことができたため、当該科研費を次年度に回すことにした。 今年度には、調査結果を解析して、公表していくための研究員雇用、学会発表等の成果公表にあてる予定である。
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