研究期間全体では主に4つの研究を行った。研究動向調査・進化ゲーム理論を用いた理論的分析・被験者実験を用いた実証的分析・人工知能原則の抽出と一般への還元。 最終年度は、研究をまとめ人工知能原則を抽出した。具体的には「AIが様々な自動判断の適用範囲を拡大させている現状」に焦点を当て、応用分野(結婚や人事採用・自動運転車など)での、直近の技術的動向を踏まえたうえでの、AIと人間の距離感に関する現実的な解を探索した。とくに個別具体的分野について議論することは、一般読者にとっても重要であると考えた。これらのテーマを深堀することで、全体として人間がどこまで決定し、AIにどこまで決定権を渡すべきかについての技術と哲学のバランスの取れた議論になったと考える。本研究をまとめるにあたって、蝶名林亮博士(創価大学、哲学・メタ倫理学)を対話者とした対談を行った。章立ては下記のとおりである。最終的にこの内容を書籍化する予定である。 1.はじめに:自動決定は至る所にある・便利だと実用化される・AIはその理由を説明できない・AIと人間のどちらが決定するべきか。2.AIは結婚にどこまで関与してよいのか:AI婚活の現状と問題提起・結婚は誰が決めるべきと言っているか:道徳的証言論による答え・AIアプリは悪用されないか・AIアプリの予測と結婚がもたらす幸福は無関係?・結局、どこまでAIは介入すべきか・ブラックボックス問題はどう考えるか。3.就職。4.信用スコア。5.自動運転車。6.アルゴリズム的偏見。この成果について、一般書としての出版を計画している。
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