研究課題/領域番号 |
20K20656
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
下里 剛士 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (00467200)
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研究分担者 |
荻田 佑 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (50738010)
佐藤 隆 信州大学, 先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所, 特任教授 (70510436)
重盛 駿 信州大学, 先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所, 助教(特定雇用) (90803487)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 乳酸菌 / プロバイオティクス / 機能強化 / スマート |
研究実績の概要 |
プロバイオティック乳酸菌は、抗アレルギー作用、抗炎症作用など、様々な健康効果が報告されている。一方で、投与時期や投与量、生活環境の違いなどの影響を受けて、その効果に個人差・個体差が生じることが課題となっている。そこで、プロバイオティック効果を強化する手法としてリボソーム工学に着目した。リボソーム工学とは、RNAポリメラーゼやリボソーム攻撃性の抗生物質を利用して自然突然変異を誘発し、微生物の転写・翻訳機能を改変することで潜在能力を効率的に活性化する技術である(Hosaka et al., Nat Biotechnol., 27(5), 462-464, 2009)。具体的には、ヒト由来プロバイオティクスの代表的な菌株として知られる、Lacticaseibacillus rhamnosus GG(LGG乳酸菌)をモデルに乳酸菌機能の強化を行った。結果として、rpsL遺伝子のK56N変異株(K56N)において、野生株(WT)と比較してヒト腸管ムチンへの付着性が強化されることを明らかにした。とくにK56Nではメタボライトが大きく変化しており、生命活動においてエネルギーの受け渡しをするATP、ADPなどの増加、およびRNA合成に関与するヌクレオチド三リン酸が増加することを見出した。また、24時間培養したK56N培養液上清中には、豊富なRNAが含まれていた。加えて、培養液上清における抗炎症作用の検証では、K56Nの培養液上清の添加により、炎症性サイトカインの発現量が有意に減少した。今後は、乳酸菌機能の強化に至る分子メカニズムの解明に焦点をあて調査を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Lacticaseibacillus rhamnosus GG(LGG乳酸菌)をモデルに、腸管付着因子の産生量と免疫調節作用が強化された変異株の取得に成功した。当初の研究計画通りに遂行中であり、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
乳酸菌機能の強化に至る分子の特定について、分泌タンパク質に焦点をあてた詳細な調査が必要である。培地中、菌体内、および菌体表層の成分について詳細な解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
出席予定であった学会や打ち合わせのための会議がオンライン開催となったことで未使用額が生じた。令和2年度までに、計画以上に変異株の種類が得られていることから、培地および菌体の成分分析を拡大して実施する予定である。
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