研究実績の概要 |
Lacticaseibacillus rhamnosus GG(LGG)にストレプトマイシンを用いたリボソーム工学を適用し、計9種類の変異株(Mutants; MTs)の取得に成功した。なかでもMT_K56Nにおいてヒト腸管ムチン接着因子として機能する菌体表層タンパク質の増加を見出した(Appl Environ Microbiol, 86, e01448-20, 2020)。乳酸菌の菌体表層タンパク質は、接着因子や免疫調節因子、菌体保護因子等の多様な役割を果たし、菌の生理機能に密接に関与する。MTsにおいては様々な表層タンパク質が増加し、機能性に変化が生じている可能性が考えられる。そこで、菌体表層タンパク質による接着性および免疫調節作用に着目し、MTsの特性評価を実施した。SDS-PAGEの結果より、MTsにおいて培養時間の経過に伴う菌体表層タンパク質の発現増加と多様性が示された。BCA AssayおよびLC-MS分析から、特にMT_K56N表層においてmoonlighting proteinsを主とするタンパク質の増加が示唆された。HT-29を用いた接着性試験において、MT_K56NがCell[pH 4.2]特異的なタンパク質、すなわち菌体表層タンパク質を介し、優れた腸管細胞接着性を示すことが明らかとなった。RAW264.7を用いた免疫調節作用の検証において、MT_K56N-BLF[pH 7.3]中に含まれる菌体表層タンパク質がTNF-α, IL-6の発現を促進し、免疫賦活作用を発揮することが認められた。トランスクリプトーム解析から、ABC transportersによる物質の膜輸送が促進されることで、様々なタンパク質がMT_K56N菌体表層に輸送されていると考えられた。
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