研究課題/領域番号 |
20K20659
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
清野 健 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (40434071)
|
研究分担者 |
金子 美樹 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (10795735)
重松 大輝 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (50775765)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
|
キーワード | 生体情報解析 / ウェアラブル心拍計 / フレイル |
研究実績の概要 |
1.ウェアラブル心拍計を用いた体調評価法(個人特性学習法)の開発. ウェアラブル心拍計を用いて計測可能な心拍数、身体活動量、環境温度などの生体・環境情報データを活用し、日々の生活中、仕事中に発生する体調不良の客観的評価法を開発した。この方法では、ある個人の身体活動量(新たに開発した加速度データの分析法に基づく評価)と周辺の環境情報データを用いて、その個人の心拍数を予測する数理モデルを構築し、数理モデルの予測と実際に計測された心拍数の解離度を評価することで、普段とは異なる体調異変の発生を検出する。実際に職場で発生した、体調不良例を用いて、このアプローチの有効性を検証した。感染症が疑われる体調異変、急性のストレスによる体調異変、女性の月経に関連した体調不良の例について、ここで開発したアプローチの有効性を確かめることができた。 2.職場環境における集団特性を活用した職場ストレスの評価法の開発 近年、夏季の最高気温が40℃を超える猛暑日が観測されるようになっている。そのような異常な高温環境では、従来の労働環境衛生の安全基準(JIS Z 8504:2021[ISO 7243:2017])を適用することはできない。そこで、本研究では、実際の労働者の集団の心拍応答を評価することで、実環境での暑熱負担を評価する方法を開発した。このアプローチの有効性について、工事現場や工場のデータを用いて検証した。 3.心不全患者の心拍応答とフレイル度の関係性の分析 加齢に伴い、心機能の低下が生じる。ここでは、高齢の心不全患者のフレイル度と関連する心機能の評価指標を開発した。この指標は、日常生活中に計測されたデータを用いて推定できるので、一般的なウェアラブル心拍計を用いて容易に指標を計算可能である。この指標の低下は、心不全の重症度の増加とも相関するため、心機能低下の早期スクリーニングへの活用も期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画目標が達成できており、身体活動量の評価、体調評価、心機能評価の方法論として、新しいアイデアに基づき、有効性の高いものが開発できた。したがって、研究計画は順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
1.性差の理解と女性に最適化された身体活動量評価と体調評価の実現 従来の労働安全衛生の安全基準のほとんどは、男性のみの実験結果に基づき確立されており、女性の特性はほとんど考慮されていない。女性には、月経、妊娠・出産、更年期障害など、男性とは異なる側面がある。そのため、性差を十分に理解して、働く女性の安全基準を確立する必要がある。そこで、本計画では、女性を対象として、加齢にともなう女性の健康問題を分析し、女性に最適化された、女性の体調評価方を開発する。 2.腕時計型ウェアラブル心拍計の活用 近年、腕時計型ウェアラブル心拍計が多く開発され、市販されるようになっている。本計画では、そのような腕時計型ウェアラブル心拍計の性能を評価し、働く高齢者の安全の見守りへの活用を検討する。これまで、本研究では、肌着型のデバイスを主に使用してきたが、腕時計型のデバイスの活用について検討する。 3.65歳以上の労働者における健康課題の整理 定年の引き上げに伴う問題を明らかにするため、65歳以上の労働者の仕事中の生体情報の計測結果に基づき、高齢労働者の健康問題を整理する。運動機能、心機能、体温調整機能について、高齢者特有の課題を明らかにする。
|