研究課題/領域番号 |
20K20660
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 浩一 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (40362694)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
|
キーワード | 骨粗鬆症 / X線写真 / 人工知能 / 深層学習 / マウス |
研究実績の概要 |
本邦で人口の10%以上が罹患している骨粗鬆症は直接的には生命に対する危険性がないが、それが原因で骨折が生じると要介護状態、うつ病や認知症の発症、死亡のリスクが増大する。国は骨粗鬆症検診を実施・推奨しているが、受診率が極めて低い。そこで、本邦で多くの人が1年に1度は受けている胸部X線検査で将来の骨折リスクが自動的に予測でき、DXAなどの精密検査を受診するよう啓蒙できれば画期的ではないか?と考え、深層学習を利用したX線画像分類による骨折リスク予測システムの構築を行うことにした。 今年度は深層学習システム構築のための条件設定に取り組み、最適な条件を選定することに概ね成功した。また、今後動物実験を行っていく際に必要となる装置の選定や実験動物(卵巣摘出動物、SAMP6マウス)供給のための調整作業を行った。 さらに、これまで胸部X線画像内に投影される鎖骨像から皮質骨厚を測定し、患者の身長・体重と組み合わせることで、腰椎と大腿骨の骨密度を推定するシステム構築を行ってきたが、深層学習を用いた自動化システムを構築した結果、初期段階だが比較的高い骨粗鬆症判定正診率を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症感染拡大による影響(緊急事態宣言発出による種々の活動の低下含む)が響き、新規の実験実施がかなり難しい状況であった。また、オンライン授業が進んだことによる資料作成等の業務が重なり、科研費研究に割り当てることができるエフォートが非常に少なくなってしまった。さらに科研費採択連絡のあった2020年8月から研究経費が使用できる様になった2020年10月にかけて所属大学を転籍することが決定し、新規で実験系構築し、実験開始することがかなり厳しい状況になってしまった。そのため、2020年度は深層学習システム構築のための条件設定すること、今後実験を行っていく際に必要となる装置の選定や実験動物供給のための調整を行うことに専念し、転籍した2021年度に速やかに実験実施できるよう対応に努めた。 このため、当初の予定よりも「やや遅れている」と判断し、2021年度は当初の予定に近づける様に最大限努力する。
|
今後の研究の推進方策 |
当初、実験動物のX線画像取得には所属機関に設置されていたX線撮影装置を使用する予定であった。しかし、転籍によって実験動物に使用できるX線撮影装置がない環境となったため、研究継続には簡易X線撮影装置の購入が必要になるなど、当初の研究計画から変更が必要となった。安価な撮影装置を確認したため、現在その装置を購入するための手続きを行っている。 転籍による環境変化、新型コロナウイルス感染症感染拡大による影響(再度緊急事態宣言発出による研究活動の低下)の懸念もあるが、2021年度内には当初の予定である「実験動物を用いた骨折リスク予測システムの構築」を完遂できるように研究を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の研究経費が使用可能となった10月以降に転籍することが決まった。転籍前の所属先で実験系を構築することは可能であったが、実験系の移設と再構築を考えると無駄になる費用や時間、労力が多くなることも想定された。そのため、転籍後に実験系を新規で構築する方が得策であると判断し、2020年度は研究経費の拠出はしなかった。 2021年度転籍したことで当初所属先で使用予定だったX線撮影装置が使用できなくなった。このため、今回得られた経費の一部を使って安価なX線撮影装置を購入することを決めた。その分、ディープラーニングPCシステムに費やす費用が減ることになるが、近年PCシステムの価格は下落していることもあり、当初計画していたシステムも値下がりしていることもあるので、対応可能と判断している。
|