研究課題/領域番号 |
20K20661
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
鈴木 聡 神戸大学, 医学研究科, 教授 (10311565)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | PTEN / 長寿薬 |
研究実績の概要 |
健康的に長寿を迎えたいという欲求は、古来からの人間の根源的な欲望である。近年、線虫やショウジョウバエにおけるInsulin/IRS1/PI3K/PTEN/AKT/FOXO経路の遺伝子変異によって寿命が有意に延長したことから、個体寿命に介入可能なことがはじめて示された。またFOXOを制御するAMPK活性化剤メトフォルミンを投与したマウスが長寿になること、PTENのコピー数を1つ増加させたPTENトランスジェニックマウス (PTENtg) では、癌の抑制非依存性にも寿命が延長する等も示され、人類が古来から夢見ていた長寿薬の探索が現実となってきた。 今回我々はPTENの不安定化分子を標的としてPTEN蛋白質量を上昇させる分子を同定し、この分子を標的とする長寿薬のスクリーニングを行い、メトフォルミンを超える夢の長寿薬を開発し、健康的な寿命の延長と国民福祉の向上を目指す。 2020年度には、EGFP-PTEN発現量をフローサイトメトリーでもウエスタンでも増加させた13遺伝子を候補遺伝子とし、そのうち3遺伝子についてはPTEN安定化に強く関与することを確認した。またこれらの遺伝子欠損マウスを解析するために、これらマウスを入手することにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新規PTEN発現不安定化因子の探索系の信頼性を向上させるため、EGFP-PTEN発現量変化に加えAKTリン酸化の変化を同時に評価する系を再構築し、sgRNA/CRISPRライブラリーによる全ゲノム一次スクリーニングを行った。その結果新規遺伝子を含む24種類の候補遺伝子を得た(約20000遺伝子をスクリーニング)。このうちEGFP-PTEN発現量をフローサイトメトリーでもウエスタンでも増加させた13遺伝子を候補遺伝子とし、そのうち3遺伝子についてはPTEN安定化に強く関与することを見出したため、これら遺伝子欠損により長寿になることを検討するために、これらの遺伝子欠損マウスを入手することにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後これらの因子とPTENとの直接結合の評価や、PTENの転写発現亢進の有無、PTENの翻訳後修飾の有無や、複合体形成変化によるPTENの安定化など、候補分子のPTENに対する作用機序の解析を行う。 またこれらの遺伝子欠損マウスを解析して、Insulin/IRS1/PI3K/PTEN/AKT/FOXO経路変化やエネルギー代謝分子変化、褐色脂肪細胞への分化、DNA損傷低下、血糖や高脂肪食投与時の脂肪肝の軽減等をin vitroやin vivoで解析する。また、これらマウスの長寿性を解析する。 さらに、これら分子を標的とするPTEN増加長寿薬のスクリーニングに向けたアッセイ法の開発および、低分子化合物のスクリーニング系を構築し、PTEN増加を来すヒット化合物を取得する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染の影響で中国からのマウス輸送が未着のため、それにかかる消耗品やマウス飼育費の支出がずれ込んでいる。またコロナ下で出張ができなくなったため、旅費は来年度の国際会議出席とする。さらに1月からの緊急事態宣言のため、研究補助員の雇用は4月からの雇用とした。このようにコロナ感染のために、これら費用を来年度に繰り越し、来年度の研究をさらに加速させ、予定通りに来年度末で研究が終了することを目指す。
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