研究課題
健康的に長寿を迎えたいという欲求は、古代からの人間の根源的な欲望である。 近年、線虫やショウジョウバエにおいて、Insulin/IRS1/PI3K/PTEN/AKT/FOXO経路の遺伝子変異によって寿命が有意に延長し、個体寿命に介入可能なことがはじめて示された。哺乳類においてもPTENのコピー を1つ 増加させたPTENトランスジェニックマウス (PTENtg) では、癌の抑制非依存性にも寿命が延長すること、FOXOを制御するAMPK活性化薬メトフォルミンを投与したマウスが長寿になること等も示され、人類が古代から夢見ていた長寿薬の探索が現実となってきた。今回我々はPTENの不安定化分子を見出し、これによる長寿性を検討する。またPTEN増加を標的とする長寿薬のハイスループットスクリーニングを行い、健康的寿命の延長と国民福祉の向上を目指すことを目的とする。これまでに、新規PTEN発現不安定化に関わる新分子探索系の信頼性を向上させるため、EGFP-PTEN発現量変化に加えAKTリン酸化の変化を同時に評価する系を再構築し、sgRNA/CRISPR ライブラリーによる全ゲノム一次スクリーニングを行った。その結果新規遺伝子を含む24種類の候補遺伝子を得た。このうちEGFP-PTEN発現量をフローサイトメトリーでもウエスタンでも増加させた13遺伝子を候補遺伝子とし、中でもPTENと直接結合し不安定化作用が最も強い2遺伝子にまず注目することにし、これらの2遺伝子の欠損マウスの作製を完了させた。その他、PTENとその既知のユビキチンリガーゼとの結合を阻害する薬剤をスクリーニング中である。
3: やや遅れている
新規PTEN発現不安定化に関わる新分子探索系の信頼性を向上させるため、EGFP-PTEN発現量変化に加えAKTリン酸化の変化を同時に評価する系を再構築し、sgRNA/CRISPR ライブラリーによる全ゲノム一次スクリーニングを行った。その結果新規遺伝子を含む24種類の候補遺伝子を得た。このうちEGFP-PTEN発現量をフローサイトメトリーでもウエスタンでも増加させた13遺伝子を候補遺伝子とし、中でもPTENと直接結合し不安定化作用が最も強い2遺伝子にまず注目することにし、これらの2遺伝子の欠損マウスの作製を完了させた。その他、PTENとその既知のユビキチンリガーゼとの結合を阻害する薬剤をスクリーニング中である。
今後新たに見出した、これら2因子によるPTEN量制御機構の解析を行い、これらとPTEN結合を阻害する薬剤スクリーニング系を構築して、スクリーニングする。またこれら2因子の遺伝子欠損マウスを解析して、長寿性を検証するとともに、Insulin/IRS1/PI3K/PTEN/AKT/FOXO 経路変化やエネルギー代謝分子変化、DNA損傷低下、血糖や高脂肪食投与時の変化等を検討する。さらに、PTENとその既知ユビキチンリガーゼとの結合阻害薬でスクリーニング陽性となる化合物については、その効果の程度や、細胞毒性の有無などを検討し、これによる長寿性を検討する。
PTENと直接結合しその不安定化作用を強くもつ2種類の遺伝子の欠損マウスの作成を中国の会社に依頼したが、コロナ禍中、その輸送が大幅に遅れたことから、解析が遅延し、翌年度に繰り越した。翌年度前半には解析に必要な消耗品として支出を終える。
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