研究課題/領域番号 |
20K20664
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
西山 成 香川大学, 医学部, 教授 (10325334)
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研究分担者 |
杉浦 悠毅 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30590202)
鈴木 美和 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (70409069)
植田 啓一 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター), 総合研究センター 動物研究室, 上席研究員 (70721728)
大崎 博之 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (80438291)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 健康長寿 / 夏眠様反応 / 体液変化 / イルカ / 宇宙空間 |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトでは、最近、申請者らが見つけた生物が備え持つ適応能力「夏眠(aestivation)反応」に着目し、それを制御することで老化防止や生活習慣病の未病に挑戦する。上記全体構想の中で、本研究期間の2年間において、げっ歯類の「夏眠」モデルを使用した「夏眠反応」の制御メカニズムの解析(課題①)、宇宙空間での微小重力環境を利用したヒトでの急激なストレス暴露による「夏眠反応」の同定(課題②)、潜水などの急激なストレスに対する適応能力(防御反応)を有している海生哺乳類・イルカでの「夏眠反応」の同定(課題③)に挑む。 初年度において課題①では、ラットの腎障害モデルにて「夏眠様反応」を生じ、体液を保持しようとしていることが明らかとなった(Acta Physiol (Oxf). 2021発表)。課題②では、2018年度JAXAマウスサンプルシェア・プロジェクトに引き続き、2020年度も採択を受け、現在、宇宙空間で飼育されたマウス皮膚の体液変化を解析中であり、予定通り次年度以内にデータ解析が完了する予定である。課題③については、新型コロナ肺炎の影響で移動が困難となり、 研究代表者らが現場の美ら海水族館に行く事を禁止されているため、海洋生物での研究が予定通りに進んでいない。 以上の研究は、超高齢化社会に向けて、生体が防御のために持つ潜在能力「夏眠反応」の発動による究極の健康長寿を目指すものであり、全く新しい研究分野を開拓する世界初の挑戦的プロジェクトである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題① げっ歯類でのメカニズム検証:ラットの腎障害モデルにて「夏眠様反応」を生じ、夏眠のドライバー因子として考えている水・Na+・尿素の組織分布を生じて体液を保持する反応が生じていることが明らかとなった(Acta Physiol (Oxf). 2021発表)。 課題② ヒトでの検証(きぼうで実施):2018年度国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 (JAXA)マウスサンプルシェア・プロジェクトに引き続き、2020年度も採択を受け、現在、宇宙空間で飼育されたマウス皮膚の体液変化を解析中である。これらの予備データをもとに、飛行士血中の尿素サイクルのメタボローム解析を目的として申請した「2020年度フィージビリティースタディー」が採択され、今後、2年間かけてJAXAと詳細なプロトコールについて協議を進める。 課題③ 海生哺乳類・イルカでの検証(美ら海水族館で実施):海生哺乳類・イルカが「夏眠反応」に必要な尿素サイクルを極めて高い能力で制御しているメカニズムを解析し、将来実施するイルカの持つ防御能力と夏眠反応との関係を実証するプロジェクトにつなげる予定であるが、新型コロナ肺炎の影響で移動が困難となり、美ら海水族館現地での研究が原則禁止されているが、サンプルをお送りいただくなどの対応で研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
「課題① げっ歯類でのメカニズム検証」については、 他の様々なモデルを用い、夏眠様反応の詳細なメカニズム解析を進めていく予定である。 現在、腎臓や肝臓の交感神経の役割等についても同時並行して解析しており、年度内にある程度の成果を出せるものと考えている。 「課題② ヒトでの検証(きぼうで実施)」については、2020年度JAXA2020年度フィージビリティースタディーが 採択され、現在JAXAと将来実施される宇宙研究について協議を進めている。その中で、ヒトにおける地上実験の拡充が求められているので、今回提案している研究版とリンクさせながら進めていく予定である。すなわち、ヒトにおいて夏眠様反応をどのようなパラメーターでモニタリングしていくのか等についての詳細を検討していく予定である。 「課題③ 海生哺乳類・イルカでの検証(美ら海水族館で実施)」については、現在、新型コロナ肺炎の影響で、研究代表者が美ら海水族館で研究を進めることが禁止されている。そこで、共同研究者の植田によってサンプリングを進め、それを他の研究者が各自の研究室で解析する手法で研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費に使用される予定であった予算が新型コロナ肺炎の影響で、使用できなかったため、次年度に繰り越した。
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