研究課題/領域番号 |
20K20666
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森 周司 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (10239600)
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研究分担者 |
神崎 晶 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50286556)
岡本 康秀 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 客員講師 (10317224)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 聴覚 / 時間分解能 / 高齢者 / 検査 / Zest / Quest |
研究実績の概要 |
当初の計画では、人を対象にした実験とコンピューターシミュレーションを並行して実施する予定であったが、コロナ禍で人を対象にした実験が実施出来ず、コンピューターシミュレーションを重点的に実施した。具体的には下記の通りである。 無音検出閾値と振幅変調検出閾値を短時間で正確に測定する方法としてZestを採用した。Zestは適応法の一つであるQuestを改良したものである。Questと同様にベイズの定理に則り、閾値の確率密度分布(以降、閾値分布)の平均値(Questでは最頻値)で刺激を呈示し、刺激に対する反応の正誤に応じて心理測定関数を畳み込んで閾値分布を更新し、その平均で次試行の刺激を呈示する。これを繰り返すと確率分布の平均(呈示刺激値)が当該の聴取者の閾値として最もあり得る値に近づき、最終試行後の閾値分布の平均を閾値として採用する。Zestで閾値を正確かつ効率的に推定するためには、閾値分布と心理測定関数を適切に設定する必要がある。 そこで、コンピューターシミュレーションで閾値分布と心理測定関数、及び目標となる聴取者の真の閾値を操作し、真の閾値と推定値の相違を計算した。閾値分布には正規分布を採用し、最初の試行での平均と標準偏差は既存のデータから計算した。心理測定関数にはワイブル関数を採用し、既発表のデータ(Mori et al., 2019)及び申請者自身が新たに測定したデータからその形状を設定した。シミュレーションには既存のPCとmatlabを使用した。その結果、閾値分布と心理測定関数を上記データに基づいて設定すれば、15試行未満で閾の推定値が真値に十分に近づくことが分かった。これは従来の閾値測定に要する試行数の1/3未満である。 以上の結果を基に、2021年度での人を対象とした閾値測定実験の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍での感染拡大防止のため、人を対象とした実験が実施出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウィルス感染防止対策を十分に行った上で、予定していた人での閾値測定実験を九州大学と慶応大学で実施する。これまでのコンピューターシミュレーションの結果に基づき、測定を効率化・短時間化し、研究分担者と協力者と連携して研究を加速する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では、人を対象にした実験用PCとソフトウェア、実験参加謝金及び研究補助謝金を使用する予定であった。しかしコロナ禍で人での実験が不可能となったため、シミュレーション用のソフトウェアのみを購入した。 次年度は人を対象にした実験を実施するため、当該年度で購入を控えた上記物品を購入し、当該年度に計画していた実験を補うよう実験を実施し、実験参加者謝金と研究補助者謝金を使用していく。
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