研究実績の概要 |
2021年度から継続し、QUESTの変型であるZESTを用いて、振幅変調(AM)検出閾値と無音検出閾値の測定を行った。具体的には、刺激音には広帯域雑音の大きな振幅の変動を無くしたlow-noise noiseを用いた。AM検出では変調周波数8、16、64、128、256 Hzのそれぞれで閾値を測定した。無音検出では、刺激中の無音区間の位置を毎試行ランダムに変化させた。以上について、ZESTでは事前に定めた閾値の初期確率密度関数と心理測定関数を用いて30試行の測定を行った。ZESTの精度や効率と比較するために、1-up 2-downの適応法による閾値測定も併せて行った。測定対象者は、2021年度と併せ、健聴者113名(18~58歳、平均22.8歳)、難聴者23名(31~81歳、平均71.0歳)であった。 結果は次の通り:(1) AM検出と無音検出の閾値は、ZESTと適応法で概ね類似した値となり(蝦名ら, 2022)、ZESTの閾値測定としての信頼性が示された;(2)得られた閾値から初期確率密度関数を推定したところ、AM検出と無音検出ともに正規分布及びmodified hyperbolic secant(King-Smith et al., 1994)が良く当てはまった(村田ら, 2023; 森本ら, 2023);(3) AM検出と無音検出ともにZESTの測定値は10~15試行で安定し、効率の高さが示された(森ら2022a; 村田ら, 2022, 2023);(4)AM検出の閾値から時間分解能の指標を求めたところ、無音検出閾値とは異なっており、二つの方法が聴覚時間処理の異なる側面を反映することが示唆された(森ら、2022b)。 研究期間全体としては、聴覚時間分解能検査にZESTを用いることの有用性を示すことが出来た。今後は、検査方法を確立し、高齢者や成人への適用を目指す。
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