研究課題/領域番号 |
20K20667
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤 英博 九州大学, 生体防御医学研究所, 特任講師 (10353468)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
|
キーワード | 健康長寿 / ハダカデバネズミ / エピジェネティクス / DNAメチル化 / メチローム |
研究実績の概要 |
超高齢社会を迎えた昨今、健康に生きる期間「健康寿命」を延ばす抗老化・抗加齢医学の研究が進められている。この分野から注目されるモデル生物のハダカデバネズミ(Heterocephalus glaber)は、同じサイズの実験用マウスの10倍も生きて、”がん” も形成されず、心臓病・動脈硬化・アルツハイマー病の症状も示さない。ヒトも含めて動物は年齢を重ねるほど死亡率は上がるが、ハダカデバネズミはその法則に逆らう唯一の哺乳類と言われる。つまり、ハダカデバネズミは老化しないで長生きする健康長寿を実現している。 ハダカデバネズミのゲノム配列は2011年に解読されて、このネズミがもつ遺伝子群は明らかとなった。しかし、ハダカデバネズミの遺伝子群がどのように使われた結果として、老化しない特性が生み出されているのかについては不明な点が多い。また、そのゲノム配列を活用した研究の報告も数少ない。そこで、ハダカデバネズミの老化しない特性を生む分子機構を解明するために、本計画研究ではエピジェネティクス機構に着目した。具体的にはエピジェネティクス機構の一つであるDNAメチル化がゲノム全域でどのような状態でマークされているのかを調べる。 令和2年度は、共同研究先から提供されたハダカデバネズミの脳・肝臓・線維芽細胞の組織からDNAを抽出して、バイサルファイト処理したライブラリを作った。続いて、次世代シークエンサーを用いて全ゲノムバイサルファイトシークエンシングを行い、ゲノム上のDNAメチル化の塩基配列データを得た。令和3年度は、その塩基配列データを用いた情報解析を進めて、ハダカデバネズミの脳・肝臓・線維芽細胞におけるDNAメチル化のゲノムマップを作成していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた種類の全ゲノムバイサルファイトシークエンシングが完了して、DNAメチル化の塩基配列データを得ることができた。現在、その塩基配列データを用いた情報解析を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
得られたDNAメチル化の塩基配列データを用いた情報解析を行なって、複数の細胞種におけるDNAメチル化のゲノムマップを作成する。続いて、マウスのDNAメチル化のゲノムマップと比べることで、ハダカデバネズミに特異的なDNAメチル化領域を抽出する。最終的には、ハダカデバネズミの老化しない特性を生む分子機構の一端をエピジェネティクスの点から明らかにすることを目指す。
|