研究課題/領域番号 |
20K20668
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
沖田 実 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (50244091)
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研究分担者 |
坂本 淳哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (20584080)
本田 祐一郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 助教 (40736344)
片岡 英樹 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 客員研究員 (50749489)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 拘縮 / 線維化 / 骨格筋電気刺激 / 至適運動条件 / 筋収縮頻度 / 日内介入頻度 / 臨床病態評価 |
研究実績の概要 |
昨年度の研究実績として,拘縮の予防戦略にベルト電極式骨格筋電気刺激療法(以下,B-SES)を活用するためには,筋収縮頻度が至適条件の一つとして重要であることを明らかにした.であるならば,1回の介入では効果を認めない刺激条件でも日内介入頻度を増やせば効果が認められる可能性があり,今年度はこの点について検討した.拘縮の実験動物モデルはラット足関節を最大底屈位で2週間ギプスで不動化することで作製し,この過程で週6日の頻度でB-SES介入を行った.B-SESは刺激周波数を50Hz,刺激強度を4.7mA,刺激サイクルを2秒収縮,6秒休止の1:3サイクルとし, 20分間の刺激時間で1日1回の単回介入を行うB-SES①群,同条件で1日2回の頻回介入を行うB-SES②群を設定した.結果,B-SES②群の条件でのみ足関節背屈方向の可動域制限の進行抑制効果が認められた.また,ヒラメ筋を検索材料にIL-1βやTGF-β1,α-SMAといった線維化関連分子の遺伝子発現の検索を行ったところ,すべて共通してB-SES②群の条件でのみ発現が抑制され,線維化の発生を示唆する骨格筋内のコラーゲン含有量の結果もB-SES②群の条件でのみ有意に低値であった.つまり,1回の介入では効果を認めない刺激条件でも日内介入頻度を増やすと効果が認められるようになり,このことからも拘縮の予防戦略としてのB-SESの至適条件は筋収縮頻度であるといえる. 加えて,今年度は障害高齢者60名,健常成人22名を対象に超音波画像計測装置で撮像した長内転筋の筋輝度,筋硬度と股関節外転可動域との関連性を検討した.その結果,筋輝度,筋硬度と股関節外転可動域には有意な相関を認め,これらの指標は骨格筋由来の拘縮の臨床病態評価に活用できる可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1回の介入では効果を認めない刺激条件でも日内介入頻度を増やすことで効果が認められるようになるということは,骨格筋電気刺激療法を拘縮の予防戦略として活用する場合の至適条件として筋収縮頻度が如何に重要かを意味している.この点について確証が得られたことは本研究の進捗ならびに臨床応用の際の着眼点として意義深いといえる. 加えて,今年度は超音波画像計測装置で撮像した筋輝度,筋硬度が骨格筋由来の拘縮の臨床病態評価に活用できる可能性が見出された. つまり,基礎・臨床研究の双方とも十分な成果があがっており,本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
骨格筋電気刺激療法を拘縮の予防戦略として活用する至適条件として,現在,刺激強度の影響が検討課題となっている.拘縮の発生メカニズムを基盤に考えると,刺激強度が高いほど効果的と仮説できるが,実際の介入の際は筋疲労を考慮する必要があることから,刺激強度の上限値を明らかにする必要があり,令和4年度はこの点に関する動物実験研究を進める. 加えて,令和4年度は「拘縮対策のための新規治療戦略の効果検証に関する臨床研究」も計画しており,至適条件下における骨格筋電気刺激療法と他動関節運動ならびに身体活動促進プログラムを組み合わせたリハビリテーション介入戦略を開発し,その効果を検証する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため,参加学会の全てがオンライン開催となり,当初予定した旅費の支出が不要となったため残額が生じた.この残額に関しては,次年度分と合わせ実験のための物品費等で使用する予定である.
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