研究課題/領域番号 |
20K20669
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
西 希代子 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (40407333)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 超高齢社会 / 少子化 / 財産承継 / 財産管理 / 相続 / アメリカ法 |
研究実績の概要 |
本研究は、超高齢社会における高齢者の財産をめぐる問題を手がかりとして,「高齢者法」という新たな法分野の形成を目指すことを目的としている。 本年度の研究実績は,3つの方向に分かれる。 第一に,すでに1960年代から,高齢者法という法分野の必要性が認識され,体系化が進められているアメリカ法について,その歴史及び一般的な内容等を中心に情報を収集し,知見を深めた。その情報量は膨大であるため,今年度は,主として,概説書等から概括的な知識を得た上で,日本高齢者法においても重要な事項ないし論点になるものと,アメリカ固有の問題とを種別し,今後,重点的に調査研究を行うべき点を明らかにした。たとえば,アメリカでは,年金,医療制度等,基礎的な社会保障が不十分であるために,それらが高齢者法に占める比重が大きくなっているなど日本とは異なる事情がある。他方で,成年後見制度の在り方等,民事法領域では,同様の問題に直面していたり,医療に関する意思決定,同意の在り方等は,アメリカにおける研究蓄積が日本とは比較にならないほど豊富であるなど,アメリカ法が大いに参考になること等が分かった。 第二に,高齢者法研究会等,日本における高齢者に関する法律課題研究の先駆け的な研究グループに参加させてもらうことで,自分の研究の進め方や方向性を確認することができた。今後も継続的に参加することになっており,来年度行う研究発表の準備に着手した。 第三に,まだ研究途上ではあるものの,研究成果を社会に還元する活動を始めた。今年度後半には,本務校において,「高齢者法の試み」という授業科目を新設した。従来の法律科目とは異なり,教科書等もない体系が未確立な段階での授業ではあるが,高齢者と家族形成・解体(婚姻・離婚)に関する問題,高齢者の財産管理・承継に関する問題等を中心に,高齢者法の内容の一部とその魅力を伝えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高齢者法研究において先導的立場にあるアメリカでの調査研究を予定していたが,新型コロナウィルス感染症の拡大のため,渡米がかなわなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ感染症の収束を待って渡米し,アメリカでの調査研究を行う。状況が好転しない場合には,文献調査等によって,可能な限り,アメリカ法の最先端の議論に触れることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の拡大のため,渡米できなかったため,旅費等の支出がなかった。来年度,状況を見て,適当な時期に渡米したい。
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