研究実績の概要 |
本研究は、「加齢」に伴う神経路の変容とドーパミン投射との関係を解剖学的および機能的に解析し、加齢による変化の神経路の実態に迫った研究である。本研究では、加齢による神経路の解剖学的および電気生理学的変容を解明するために、若年および老齢の動物(基本はげっ歯類、解剖学的所見は一部マーモセット)を用い、シナプスから行動レベルまで体系的な解析を行った。本課題を通じて、線条体の中にD1R遺伝子を持つ直接路ニューロンとD2R遺伝子を持つ間接路ニューロンが偏在している部位があり、それが黒質緻密部の特定の部位と投射関係にあることを明らかにした(Ogata etal., 2022)。この領域はマウスのP8から172 週というかなりの高齢まで観察できた。さらにマウスのみならずストレインの異なるラットでも観察された。さらに驚くことに、霊長類の一種であるマーモセットの雌雄ともに観察された。現在はこの領域への入出力を解析し、投稿準備中である(Kadono et al., in preparation)。また最近、アデノ随伴ウイルスのセロタイプ 1(AAV1)が効率的に順行性経シナプス伝播することが報告された(Zingg et al., Neuron, 2017)。しかしこの手法はグルタミン酸作動性興奮性シナプスおよびGABA作動性抑制性シナプスでは成功例の報告があるものの、ドーパミン作動性シナプスでの成功例がなかった。私たちは本課題中に、世界で初めてドーパミン作動性シナプスにおけるAAV1順行性経シナプス伝播実験に成功し、国際学会に発表して論文投稿した(Karube etal., 2024)。これらのことから、本課題を通じて、ドーパミンと加齢との神経回路の関係に迫りつつある。
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