研究課題/領域番号 |
20K20677
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
前島 美保 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (40436697)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 歌舞伎音楽 / 音楽演出 / 歌舞伎囃子 / 黒御簾音楽 / 台帳 / 附帳 |
研究実績の概要 |
本研究は、江戸中後期から近代にかけての歌舞伎関係諸史料を精読・分析しながら、使用楽器の変遷と作品研究を通して、歌舞伎の写実的な音楽表現の生成と展開を実証的に明らかにすることを目的としている。研究2年目にあたる令和3年度は、主に以下の三つの方向から研究に取り組んだ。 (1)初年度より継続して江戸中後期の歌舞伎台帳(台本)から音楽演出を抽出する作業にあたっており、『鶴屋南北全集』の作業を終えた。また『大南北全集』や『鶴屋南北未刊作品集』にも着手し始め、南北以前あるいは以後の音楽演出との違いや変遷を分析する際の基礎データを集積した(継続作業中)。同時に歌舞伎の作劇法に関する書籍や先行研究等を収集し、作品研究の前提把握に努めた。 (2)国立劇場蔵「高木浩志氏寄贈資料」のうち、小川弥三郎旧蔵史料56点、松永和二郎旧蔵附帳9点のデジタル撮影を業務委託により行った。本史料の上演考証ならびに分析を進めるため、『近代歌舞伎年表』や『義太夫年表』の囃子方に関するデータ入力も手がけた(継続作業中)。 (3)以上の分析・考察にあたって、今後必要となるであろう資料「上方歌舞伎番付等刷物貼交帖」を購入した。この中には新出と考えられる稀覯番付6点が含まれている。また前年度に引き続き、江戸期歌舞伎囃子方六代目田中伝左衛門筆の伝書『芝居囃子日記』の精読を進めたほか、音楽演出について検討する上では周辺資料となるが、メトロポリタン美術館所蔵の江戸歌舞伎の囃子方楽屋図に関する考証も併せて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度より続くコロナ禍で、十分な時間を必要とする史料調査や出張が現実的に難しい状況にあったため。その分周辺資料の購入・整理・分析等に時間を充て、今後の研究の方向性を探った。
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今後の研究の推進方策 |
感染状況を見極めながら、史料調査と遠隔による複写依頼を行う。また各種の資料整理作業については、作業補助を依頼する予定である。研究を推進するため、学会や研究会等で発表し、意見交換してゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
史料調査が行えず旅費が使えなかったことと、当初予定していた作業補助への謝金が発生しなかったため。次年度、これまで叶わなかった史料調査を充実させ、作業補助を依頼するなど、研究の推進を図りたい。
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