研究課題/領域番号 |
20K20679
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
神谷 嘉美 明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員(客員研究員) (90445841)
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研究分担者 |
関根 由莉奈 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究副主幹 (00636912)
本多 貴之 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (40409462)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | 黒漆 / 漆着色 / 鉄イオン / XAFS |
研究実績の概要 |
重要文化財に指定されている滋賀県聖衆来迎寺所蔵の三具足の再現復元を目指すプロジェクトに参加する機会を得て、2021年度にこの香炉をモデルとして7種類の漆着色した試験片を作製して紫外線照射による加速劣化実験を行った。本年はこれらの研究結果をまとめ、文化財保存修復学会第 44 回大会で発表して、漆を用いた金工品の黒色化技法についての議論を深める情報を提供した。 また鉄分添加によってつくられる「黒漆」のXAFS実験によって、生漆の中で鉄の状態がどのように変化するのかを議論できる可能性が出てきた研究の結果は、情報を整理して英語論文としてまとめた。 一方でCOVID-19の流行とウクライナ情勢によって、当初計画していた実験に支障が出た。そこで過去の実験では手法ごとの差異を検証するには至らないと判断していた赤外分光法について再度の検証を行った。結果として、新たな解析ソフトウェアを利用しながら検証すると、解析精度が向上して手法ごとの差異を見出だせる可能性があるとわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の流行が続き、当初計画していたX線吸収微細構造解析(XAFS)法を用いた複数の黒色塗膜の構造解析の実施に支障が出た。さらにウクライナ情勢の影響で、熱分析に必要なHeガスが入手できず、加速劣化試験を行った複数の黒色塗膜サンプルを対象とした検討を進めることが困難であった。分析可能なサンプルがありながら実験計画に支障が出たことを改善できなかったことから「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ウクライナ情勢の影響で実験に必要なHeガスが入手できず、熱分析での検討を進めることが困難であったが、新たに装置を借りての実験ができる状況となってきたため、今後は着実に測定を実施していく予定である。進展が遅れていた実験を着実に行うことで、加速劣化試験を行った複数の黒色塗膜サンプルを対象とした塗膜の解析を進め、手法ごとを比較するための基礎的データの収集と整理に努める。また、差異が小さいと判断していた分析手法について、再検討の意義が高まるデータを得たことから、今後の検討項目に追加して測定を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度よりはややおさまってきたとはいえ、世界的な新型コロナウィルスの流行が続いたことで、XAFS装置を借りて本格的に実験を行うことができなかった。さらにウクライナ情勢の影響によって、熱分析に必須のHeガスが入手できない困難な状況は続いていたため、各種サンプルのPy-GC/MS分析が当初計画していた通りには実現できなかった。しかし新型コロナウィルスの流行は沈静化したことで、次年度はXAFSでの測定が問題なく実施できる予定である。また、Py-GC/MSについては企業の装置を借りて測定できる可能性が出てきたため、次年度では着実に実験を行えるものと考えている。
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