本研究の意義は、デジタル技術を効果的に援用することで石工の鑿痕や左官の刷毛跡をも「個人様式」と再定義し、古典的な絵画様式による分析・分類を多角的・複眼的・科学的に補強したことにある。石工や左官をも射程に入れて壁画を総括的に捉える本研究の編年構築法は、世界各地の壁画研究に応用でき、美術史・技法史・建築史・考古学・文化財科学を学際的に融合させた好例である。美術史の資料写真はアド・ホックで汎用性に乏しかった。対してカメラとパソコンさえあれば構築可能な写真測量法やRTIは構築しさえすれば使途は無限であり、本研究により新しい美術史研究のあり方が示された。
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