本研究の目的は、現代アジアにおける菜食実践の広まり方、その背景にある伝統的思想の影響、今後新たに形成されうる普遍的道徳のあり方、それが社会を変革する可能性等について考察することであった。菜食実践の広まりとその背景思想については、主に文献・言説調査によって、古代から現在に至る流れを把握し、特に1990年代以降、欧米のヴィーガニズムとその背景をなす環境保護・動物愛護思想、台湾のいくつかの仏教集団による影響があることを確認した。今後の動向としては、環境保護や動物愛護のために禁欲的に肉食を控えるのではなく、おいしいものを食べたいという欲求と菜食実践を両立させようとする傾向が強いことが明らかになった。
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