研究課題/領域番号 |
20K20687
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
阿野 晃秀 京都先端科学大学, バイオ環境学部, 嘱託講師 (70817642)
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研究分担者 |
森本 幸裕 京都大学, 地球環境学堂, 名誉教授 (40141501)
山下 三平 九州産業大学, 建築都市工学部, 教授 (50230420)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 雨庭に適した緑化植物の選定 / 空隙貯留型雨庭に適した緑化植物の選定 / 社会実装 / 雑草防除 |
研究実績の概要 |
①雨庭に適した緑化植物の選定 (1)最も典型的な形式である窪地型の雨庭の地形をプランター内で再現し、浸水頻度を変えることで16種の冠水耐性を検証した。各植物の高さ・被度・開花・鑑賞価値からみた葉の状態を月に一度記録した。結果、選定した16種すベては乾湿の変化の激しい雨庭の環境に耐えうることが実証された。浸水頻度の違いによる生育への影響の差は見られなかった。本実験で用いた検証した16種は以下の通りである。雨庭の底部への植栽を想定した種:イグサ・ミソハギ・フジバカマ・サギソウ・カキツバタ・クリンソウ。雨庭の側面への植栽を想定した種:オミナエシ・ヨメナ・ワレモコウ・ノカンゾウ・シュウメイギク・シモツケソウ。雨庭の上部への植栽を想定した種:クガイソウ・アヤメ・カワラナデシコ・キキョウ・ヨメナ・シュウメイギク。 (2)空隙貯留型雨庭に適した植物の種の選定実験を行い18種中10種に適性があることが示唆された。植栽基盤である砂利の厚み10cm・20cmによる生育への影響に大きな差は見られなかった。また、雑草防除効果にも両者に違いは見られなかった。適性があると判断された種:コウボウムギ・タツナミソウ・ハマナデシコ・ハマカンゾウ・トウテイラン・ハマギク・キリンソウ・テッポウユリ・サツマノギク・カワラナデシコ。適性がないと判断された種:ハマニガナ・ハマユウ・ハマベノギク・ノジギク・ダルマギク・アサギリソウ・マツムシソウ ②社会実装された雨庭の水収支・植栽 福岡県T建設事務所に社会実装された雨庭のモニタリングを行った。水収支に関しては水漏れが見つかったため、本年度に計測する。植栽は、導入した植物種全てが枯死することなく生存した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究資金の獲得が2019年7月であったことから、2020年より実験を開始することになったが、昨年度の実験により、雨庭に適した植物のスクリーニングを行うことができた。また、日本で実装例のない空隙貯留型雨庭の雑草防除効果についても確認することができあた。本年度は昨年度の結果を踏まえ、サンプル数を増やし、計測方法をより客観的・定量的で再現性の高い方法へと改善することで、確実に日本における雨庭に適した緑化植物の選定方法の一つを確立することができそうである。 福岡県に実装した雨庭に関しても一年かけて予備的な調査を行うことができたことで、選定した緑化植物の適性、および雑草防除効果について確認ができた。 一方で、当初想定していた地域コミュニティを巻きこみ雨庭の普及・啓発活動のモデルを構築する活動はコロナ禍において中止せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
①雨庭に適した緑化植物の選定:予備的な実験により植物種を絞り込むことができたため、サンプル数を増やしより確度の高いデータを取得する。また、従来的に計測されてきた項目(高さ・被度・開花)による計測では、浸水によって受けた目に見えない植物のストレスを検知するには限界があることがわかった。そこで、本年は計測方法をより客観的・定量的で再現性の高い方法へと改善する。具体的には、葉緑素の量とクロロフィル蛍光を測定することで植物の活性状態を観測する。また、先行研究によりクロロフィル蛍光と浸水ストレスに弱い相関があることがわかっているが、クロロフィルメーターは高価である。そこsて、今後の雨庭の普及とモニタリングの簡便性を考え、比較的安価なSPAD値も計測し、クロロフィル蛍光との相関を確認することで、SPADが雨庭植栽のストレスを検知する代替的な方法して使用可能かどうかも検討する。 ②社会実装と検証:社会実装した福岡の雨庭ついては、水収支と植栽のモニタリングを継続し実験プロットでの知見と比較すする。また、雨庭への意識・デザインの選好性についてのアンケートデータを分析し、混植による雨庭植栽が社会的に受け入れられる可能性を検証する。 ③コミュニティを巻き込んだ雨庭の推進モデルの構築:本項目に関しては実施可能性が不透明なため中止し、このための旅費として計上していた資金を活用して①の緑化植物の選定方法の改善を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により出張が数度中止になったことと、緑化実験のための資材が想定よりも安価なものが購入でき、残高に余裕ができたため。2021年度の実験を踏まえ2022年度は植物体の活性の測定方法を改善するため、その機器の購入等に使用する。
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