研究課題/領域番号 |
20K20700
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
田中 真一 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (10331034)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 音韻論 / 音声学 / テキストセッティング / 声援 / 定型詩 / 口承文化 / 呼びかけ / インターフェイス |
研究実績の概要 |
開始初年にあたる2020年度は、テキストセッティング(あらかじめ決められた型に言葉を当てはめる操作)、借用語音韻論(借用語受入の際の音韻操作)、音楽理論、言語理論に関する文献を広く収集し整理した。それとともに、口承文化を中心とした音声言語資料を広く収集し調査と分析を開始した。上記の一連の作業を進めながら、コロナ禍での今後の調査対象の整理を試みた。実地によるインフォーマント調査が困難であったことから、おもに上記の方法により、文献および(すでに録音された既存の)音源資料を中心にデータを収集した。 具体的な言語データとしては、掛け声、遊び歌(数え歌)、サッカー・野球などのスポーツ声援(chant)、J-Pop等の資料を広く収集し、音声・音韻・形態分析を並行して行い、また、上記の言語データ間の異同を整理した。その結果、声援・掛け声などの「短いセッティング」と、詩を中心とした「長いセッティング」との間で、部分的に異なるパターンが見られること、それと同時に、両者に共通したセッティングパターンも見られることが明らかになった。後者については、とくに日本語の言語現象を超えて、(1) 一貫して末尾要素の音節量が中和する方策が見られること、(2)テキストが短い場合にモーラによるセッティングが、長くなると(末尾方向から)音節が役割を担うこと、(3)テキストが鋳型より短い場合は、初頭要素が引き伸ばされることによりセッティングが行われることが確認できた。 成果として、本テーマに関する論文2編を執筆し(2021年度以降に公刊)、講演会・学会・研究会での口頭発表5件を行った。また、本テーマを材料として辞典項目の執筆を行い公刊された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で、対面によるインフォーマント調査は実施できなかったものの、種々のテキストを一次資料をとして調査・分析を進めることができた。限られた条件の中で、比較的新しい時代のデータを集中的に集めることができ、分析に反映させることができた。それらの成果を学会研究会発表3件、招待講演2件という形で発表した。また、本テーマで2編の学術論文(次年度に出版予定)をまとめることができた。さらに、成果内容を材料として、辞典項目の解説を執筆し公刊された。
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今後の研究の推進方策 |
種々のテキストセッティングの事例を収集することにより、言語間の対照・類型化を推し進める予定である。言語として、チャハルモンゴル語、中国語、韓国語、ロシア語、イタリア語、英語などのセッティング例を広く収集する予定である。また、もう一方の軸として、言語事例間の比較も試みる。具体的には、掛け声(集会やデモを含む)、定型詩、数え歌、スポーツ声援などを広く集め異同を整理する予定である。 また、可能であれば、実地インフォーマント調査を行い、音声データを記録し保存する。また、可能性があればオラショの分析も開始する。これらの方策を通して、言語間・現象間の異同を分析するとともに、音韻理論(言語理論)との関係について考察する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナにより研究の開始が数ヶ月遅れ、支出可能期間が短くなったこと、そのことと関連して、本来旅費や対面調査の謝金として使用する予定の金額が、予定通り使用できなかったことによる。
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