研究課題/領域番号 |
20K20713
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
百原 新 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (00250150)
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研究分担者 |
渡辺 洋一 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 助教 (30763651)
糟谷 大河 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 准教授 (90712513)
工藤 雄一郎 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 准教授 (30456636)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | 菌類遺体 / 菌類考古学 / 古生態 / DNA / 大型植物遺体 |
研究実績の概要 |
菌類が形成する硬い菌核や子実体の遺体や,菌類の侵入により変形した植物病痕のある葉・果実の遺体を,研究代表者が植物遺体の研究の過程で収集した標本の中から識別し,それらの同定を試みた.彦根市の芹川河岸の最終氷期の約3万年前の泥炭層からの菌類化石と植物病痕の抽出を行うために,現地調査と泥炭層の年代測定,泥炭層からの植物化石の抽出を行った.その結果,アーバスキュラー菌根菌ののう状体や,スゲ属の果苞に特徴的に見られる菌類の子嚢殻が含まれていることが明らかになった.これらの同定を行うとともに,姶良Tn火山灰前後の気候変化と降灰の影響を受けた湿地の植生変化を復元し,植物と菌類との関係について検討を行った.一方,2021年度に行った新潟県魚沼丘陵の第四紀前期更新世のクロコブタケ科菌類遺体の分類同定の研究については,本年度は投稿のための論文執筆を行った. 利尻島の完新世泥炭中に含まれる外生菌根菌のCenococcum geophilumの菌核の年代と,同じ泥炭層の地上部の植物遺体の年代を比較したところ,Cenococcum geophilumの菌核の年代は,より新しい年代値が測定されていたことが明らかになった.同じ泥炭層の根の測定値も植物の地上部の年代よりも新しい年代になっていることから,地下水位の低下により植物の根が地表下に深く侵入できる環境では,Cenococcum geophilumも地下深くまで分布できることが示唆され,Cenococcum geophilum菌核は,放射性炭素年代測定による堆積物の年代推定には向かないことが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
野外調査や堆積物からの植物遺体,菌類遺体の抽出作業や,論文執筆作業が効率よく行えなかったため,補助期間の延長申請を行った.
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今後の研究の推進方策 |
クロコブタケ類の化石の記載論文を完成させ,投稿するとともに,その他のこれまで発見した菌類化石についての記載論文を執筆する.さらに,これまで収集した植物化石標本からの菌類化石の選別作業も進める.最終氷期以降の埋没林を中心に野外調査を行い,堆積物の大型植物遺体分析により新な菌類化石の発見につとめる.菌類化石を含む地層の層序学的・年代学的検討を行い,大型植物遺体群からの古植生復元を行うことで,古植生・古環境を復元し,過去における菌類の生育環境・古生態の推定を行う.さらに,菌類化石と参照するための現生菌類標本も収集する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に研究代表者の病気により,試料のサンプリング,分析や年代測定など主要な調査ができなくなったため.次年度の早い時期に野外調査を行い,その旅費,分析補助謝金や年代測定費などに予算を使用する.
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