江戸時代の朝鮮通信使行列を描いた図は、国内外に少なからず残されている。それらは、本当の朝鮮通信使の行列をそのまま写実的に描いたもののように見えながら、いくつかの虚構を含むこともまた指摘されてきた。なかでも神戸市立博物館所蔵「朝鮮人来朝行列図」をめぐっては、1990年代の黒田日出男およびロナルド・トビにより、江戸の天下祭の仮装行列を描いたものとして解釈され、それが通説的な位置を占めて今日に至る。本研究は、当該図および類本を朝鮮通信使行列図の全体的傾向のなかに置き直して再検討した。神戸市立博物館所蔵「朝鮮人来朝行列図」は、祭礼行列図を参考にして朝鮮通信使行列を描いた図であることを確定した。
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