研究課題/領域番号 |
20K20719
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山田 重人 京都大学, 医学研究科, 教授 (80432384)
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研究分担者 |
藤本 晃司 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (10580110)
東島 沙弥佳 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (10792830)
寺田 康彦 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20400640)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | MRI / シーケンス / 有袋類 |
研究実績の概要 |
本研究の目標は、「国内外に多く“死蔵”されている動物の胚・新生仔液浸標本の資料的価値の再発掘」である。従来、これらの標本は収集すれども活用法の少ないいわば“死蔵標本”と化す傾向にあった。本研究で用いるオーストラリア・アデレード大学所蔵の有袋類(コアラ・ポッサム)新生仔標本もその一例で、2000年より収集開始されたものの利用者がおらず、200以上のサンプルが死蔵されていた。しかし、胚・新生仔標本は、生物の多様なかたちづくりに関する膨大な情報を小さな体に秘めており、博物学的に非常に貴重な資料である。そこで本研究では、そうした死蔵標本を再度活かす方法の確立を目指すものである。 比較的小型の標本については、筑波大学のMRI機器を用い、撮像プロトコルの検討を行った。4.7Tシステムで60ミクロンの空間分解能で、1体につき数日程度の撮像時間で撮像する条件が最適であることが示された。現在、成長段階の異なる新生仔の撮像を実施しており、体内構造の立体構築を進めている。比較的大型な標本の撮像に向け、京都大学のMRI機器を用い、ヒト用7T MRIで動作する標本撮影用コイルを開発した。ヒト用の撮像シーケンスをもとに、高分解能撮像が可能となるような改良を行った。また、撮像用チューブの外形が異なる3種類(145mm, 64mm, 26mm)の標本を対象とした撮像条件の最適化を行い、各々 250ミクロン、120ミクロン、80ミクロンでの撮像が可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のため一切の渡航予定がキャンセルとなり、新規標本を入手することが不可能となったが、事前に東島が日本に持ち帰っていた有袋類新生仔標本を用いてプロジェクトを進行できている。4.7 T(200 MHz)及び7 T(300 MHz)のMRIシステムにおいて、有袋類新生仔標本の体内構造を観察するための、最適な撮像プロトコルを検討し、4.7 Tシステムが最適であることを示すことができた。また、最適な撮像シーケンスを調べ、60ミクロンの空間分解能で、1体につき数日程度の撮像時間で撮像する条件が最適であることが分かった。その結果、内臓・骨格はもちろん筋の区分まで可能な高解像度画像が得られており、体内構造の立体構築が可能となっている。 比較的大型な標本の撮像については、シーメンス社とコイル開発に関する情報提供のための共同研究契約を行い、ヒト用7T MRIで動作する標本撮影用コイルを開発した。また別途、米国QED社が開発した標本撮像用コイルを用いた検証も行った。シーメンス社とパルスシーケンス開発環境の提供に関する共同研究契約を行い、ヒト用の撮像シーケンスをもとに、高分解能撮像が可能となるような改良を行った。また、撮像用チューブの外形が異なる3種類(145mm, 64mm, 26mm)の標本を対象とした撮像条件の最適化を行い、各々 250ミクロン、120ミクロン、80ミクロンでの撮像が可能であることを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍による渡航の影響が長引くことも考慮し、日本国内の動物園に協力者を募り、国内飼育されていた有袋類個体の新生仔標本を活用する方向に計画を転換している。現在のところ鹿児島県・平川動物公園からすでに標本の貸与を受けている他、数園との交渉中である。現在所有する標本については引き続き、最適化したMRI用撮像プロトコルを用いて、異なる成長段階の有袋類新生仔標本のMRI撮像を進める。京都大学と筑波大学の両方のMRI機器を用いて同じ標本を撮像し、結果の対比も試みる。より条件の良い画像を用いて、体内構造の立体構築を進める。その結果をデータベース化し、外観の情報と体内の解剖学情報との統合を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの感染拡大により、外国旅費を全く使用できなかったこと、謝金による人材雇用が進まなかったことが挙げられる。 次年度、人材雇用を進め、外国旅費については可能な国内旅費に転用するなど、研究の公立的な推進を図る。
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