研究課題/領域番号 |
20K20723
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研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
河崎 衣美 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部資料課, 主任研究員 (60732419)
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研究分担者 |
原 光二郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (10325938)
原田 浩 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (60250148)
大西 貴夫 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 課長 (80260371)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | 石造文化財 / 地衣類 / 生物劣化 / 遺伝子解析 / 劣化予測 |
研究実績の概要 |
本研究は地衣類を対象とした文化財保存科学と分子生物学、分類学との融合研究である。地衣類は菌類と藻類が共生した生物であり、分類上は菌類に属し、その特徴は菌類の種が決定している。文化財保存科学の分野において地衣類は、基物への機械的な穿入、代謝産物として有機酸を分泌し石材を変質させること等の劣化要因として挙げられるが、その影響は文化財の他の劣化要因と比較して認識されにくいものである。地衣類による石材劣化のうち特に認識が困難である化学的劣化に関わる物質として、シュウ酸カルシウム等のバイオミネラル(生体鉱物)を生成する地衣類種があることが知られており、このシュウ酸塩鉱物は地衣類の代謝産物であるシュウ酸とカチオン成分との二次的生成物である。そこで本研究では、文化財保存の立場から、地衣体内におけるシュウ酸の含有量とその生成に関わる遺伝子との関わりを探ることにより、地衣類による石材劣化機構の一端を明らかにする。地衣類による石材の化学的劣化の可能性を定量的に把握し、それに関わる遺伝的系統を探求することによって、石造文化財の地衣類による劣化の予測とその予防に役立てるための手がかりを得る。 当該年度は基礎研究として定めた、石造文化財とその地衣類叢調査、岩上生地衣類の有機酸分析、発展研究として定めた地衣類の有機酸生成に関与する遺伝子の特定研究に取り組んだ。初年度に調査した地衣類に関する分類学的研究を進めるとともに、対照として地衣類およびその他微生物付着の著しい石造文化財の調査を実施した。地衣類の有機酸生成に関与する遺伝子研究においては、Pertusaria laeviganda 培養地衣菌をモデルとし実験を行った結果、オキサル酢酸からシュウ酸への反応に関わるオキサロアセターゼの発現が地衣類のシュウ酸生成で主要な役割をしていることが推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度も感染症流行の影響により、研究グループとしてまとまった調査ができなかったが、初年度に実施した調査から研究者が各自で研究を深めることができた。しかし、イオンクロマトグラフ装置の故障により、岩上生地衣類の有機酸の分析については遅れが生じた。分類学的検討、バイオミネラルの分析、シュウ酸代謝関連酵素遺伝子の探索を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
調査対象において石造文化財における地衣類叢調査を行い、主要な岩上生地衣類の有機酸の含有量を調査し、有機酸の生成に関与する遺伝子の探索として シュウ酸代謝関連酵素遺伝子の特定を試みる。これにより石材劣化リスクの高い地衣類の識別と、その遺伝的系統からの劣化予測に関して検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は本研究グループでの共同調査ができなかったため、次年度に共同調査を実施し、それに伴う分析や実験を実施する計画である。
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