研究課題/領域番号 |
20K20725
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堤 研二 大阪大学, 文学研究科, 教授 (20188593)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 空間秩序 / 基礎生存諸機能 / 地域計画 / 地域開発 |
研究実績の概要 |
本研究の骨子は、①空間秩序(Raumordnung)と基礎生存諸機能(Grunddaseinsfunktionen)の概念を整理し、②それらが如何に日本の企画院等に影響を与えたのかを明らかにすることであり、また、③ケルン貨物駅跡再開発などを対象として、日本の事例(汐留や梅田など)との比較を通じて、国土計画・地域計画に関する思想・手法の日欧での異同を検討することである。 昨2020年度同様、2021年度もコロナ禍により国内外の出張による現地調査や資料収集を断念せざるを得なかったために、事項的には当初の計画通りに研究を進めることはできなかったが、土木学会からの依頼による、国土計画と過疎地域に関する論考を公表し、また、農林業経済学関連の書籍に人口減少地域における地域生活・基幹産業の維持に関する論文を掲載した。また、住民をインクルーシブな視点で包含するスマートシティの観点から、国際ワークショップ開催のコアメンバーとなり、発表を行うとともに、プロシーディングスの編集主幹を務めることとなった。 このほか、著名な書評誌である『週刊読書人』に「プラネタリー・アーバナイゼーション」に関する書評文を寄稿したが、その執筆過程においては、欧米の都市空間思想の整理を行うことができた。 国内外の地域計画・街づくりに関する書籍の購入や、地域計画・地域開発に関する情報収集も行った。これらの作業については、研究・情報収集・情報処理用に購入したPC等によるところも大きい。タウン・アセット・マネジメント(TAM)との関連のある講座での講演も依頼され、複数回の講演を「地域アイデンティティ」の観点か行った。また産炭地域社会や地域防災に関する講演依頼を受け、本研究の成果の一部をそれらの講演内容に盛り込んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍による制限の中で、研究発表(刊行分および口頭分)のほか、書籍の収集とその精読・情報の整理を行ってきた。とくに2021年度後半の2月からは、研究環境の整備を急ピッチで進め、研究室2部屋を間接経費によって借用することができ、また、次年度に向けて資料の整理・収集事務のための人員雇用の目途も立ったために、研究の進捗スピードも上がってきた。2021年末には出張が実現した。具体的には、長崎県・五島列島へ出張し、スマートシティの種々の課題を現場で確認することもできた。刊行された成果は3本であったが、会合も限定される中で、WEB形式でのものを含め7本の口頭発表・講演も行うことができた。所属部局の大学院統合に伴い、年度末の会計処理を控えざるを得ない極めて厳しい事態が生じたが、3月には私費にて島根県隠岐の島町での調査行を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の状況をさらに見極めながら、可能ならば国内外における地域計画・地域開発に関わる現地調査を行うとともに、関連する文献・資料類の収集を続行したい。国内外への出張が難しい場合には、効率的な代替策を講じていく。 また、ポストアーバン論をさらに進化・深化させ、ポストコロナやSDGs、Society 5.0、DX の時代を総体的に捉える「ネオソサエティ論」を展開しつづけていく。また、そこにおける人間生活と地域との関連性を整理し、空間秩序や基礎生存諸機能の意義を考究していく。近代日本における企画院や昭和研究会の国土計画・国土政策の思想に関する資料探索と資料収集の努力は継続していく。戦時期における国土の「再編成」概念にも注目しており、ドイツやソビエトの国土計画思想との関連性を追跡していく。とくに、明治大学の故・石井素介教授が残された資料類の閲覧を画策しているが、所蔵先の明治大学への働きかけ(大六野耕作学長あて)なども既に行って、同学長個人からは好感触を得ている。 ヨーロッパなどにおける地域計画の事例と、その背景にある空間概念・空間思想の探究も続けていくとともに、アジアや日本におけるタウン・アセット・マネジメント(TAM)の可能性も検討の視野に入れていく。 また、2022年度より雇用労働力(週2回)によって資料整理と情報収集を加速させる。さらには、2021年度2月からの研究スペースの新規確保によって、2022年度には分析・研究の効率も上がるものと期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、とくに国内外旅費の支出計画などについて、大幅な変更を余儀なくされた。また、雇用を見込んだ人件費に関しても、雇用募集などが思うように進まなかった。 くわえて、所属部局の文学研究科が他部局の言語文化研究科と統合することとなたっために、2021年度末における科学研究費からの支出を控えなければならなくなったことも、繰越しをせざるを得なくなった大きな原因であった。以上の複数の理由が重なったために、生じた残額について、次年度への繰越しを行うこととなった次第である。 繰越し分については、とくに地域計画・都市計画・計画思想に関するドイツ語文献をはじめとする欧語文献等の購入および新たに生じる人件費に充当する。後者に関しては雇用の見込みが立ち、2022年度当初よりすでに1名の確保が実現している。コロナ禍問題が沈静化して出張がいっそう可能になれば、国内外の出張旅費にも充当する予定である。
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備考 |
researchmapにある研究代表者のサイトを上掲した。
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