研究課題/領域番号 |
20K20729
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鹿島 薫 九州大学, 理学研究院, 准教授 (90192533)
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研究分担者 |
福本 侑 島根大学, エスチュアリー研究センター, 客員研究員 (20772974)
山田 和芳 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (60508167)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 年縞 / 湖沼 / 人新世 / 高精度環境復元 / フィンランド / 珪藻 |
研究実績の概要 |
本研究においては、厚層年縞堆積物の共同ボーリングコア試料採取をフィンランド・トゥルク大学と共同で行う。具体的には、薄片試料を過去300年間分連続的に作成し、これを研究分担者および研究協力者間で共有する。これらの薄片試料と、未処理の土質試料を用いて、帯磁率、MICRO-XRFによる化学成分分析、セシウム137などの計測、微化石分析(花粉・珪藻)、昆虫遺骸分析、微粒炭分析、粒度分析などを実施する。上記の顕微鏡レベルでの詳細分析により、過去300年間の、すべての豪雨とそれぞれの豪雨強度、毎年の降雪量、および夏季における水温および日射量の変動を定量的に復元することを目的とした。 2021年度は、フィンランドへの渡航を計画していたが、新型コロナウイルス感染拡大のため実施することができなかった。フィンランドから、年縞を伴う湖沼堆積物を送付され、それ用いて、微化石分析を中心として行った。具体的にはKortta湖、Kalio-Kouru湖、Lehmilampi湖、Ori湖、Pulmanki湖、Ori湖ほかである。これらの分析によって、過去750年間の豪雨頻度の復元を行うことができた。当初計画では過去300年間としていたので、この点は予想以上の進展といえる。その成果は、国際誌4編、国際学会講演2、国内学会講演2として発表した。 研究代表者は、別途経費によって、2022年3月1日から31日までフィンランドに渡航し、フィンランド側の共同研究者であるトゥルク大学Timo Saarinen教授ほかと一緒に、フィンランド北端部、Kevo湖ほかにおける現地調査と、年縞堆積物を有するボーリングコア試料の採取を実施した。これらの試料は、2022年度において古環境解析のための諸分析を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、フィンランドへの渡航を計画していたが、新型コロナウイルス感染拡大のため実施することができなかいと予測していた。そこでフィンランドから、年縞を伴う湖沼堆積物を送付され、それ用いての分析を行っている。具体的にはKortta湖、Kalio-Kouru湖、Lehmilampi湖、Ori湖、Pulmanki湖などである。これらの分析によって、過去750年間の豪雨頻度の復元を行うことができた。当初計画では過去300年間としていたので、この点は予想以上の進展といえる。しかし、現地調査が実施できないことは研究の進展にとって大きな障害となっていたことも事実であった。 ところが、研究代表者は、別途経費によって、2022年3月1日から31日までフィンランドに渡航し、フィンランド側の共同研究者、トゥルク大学Timo Saarinen教授ほかと一緒に、フィンランド北端部、Kevo湖ほかにおける現地調査と、年縞堆積物を有するボーリングコア試料の採取を実施したすることができた。これによって、これまで研究の障害をもたらしてきた要件は一掃され、研究は当初の予定通り、順調に進展することができるようになった。 これらの試料は、2022年度に古環境解析のための諸分析を行い、当初の予定通りの、そしてそれ以上の成果を示すことができると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
フィンランドから送付された湖沼試料の分析を継続する。新型コロナウイルス感染拡大の状況を見ながら、フィンランドでの現地調査を実施する。 現地調査における新規試料の採取のほか、年縞薄片の作成と、帯磁率、MICRO-XRFによる化学成分分析を早急に実施する。厚層年縞をもちいることで、すべての出水、夏季の水温と日射、森林火災イベントを判読することが可能となり、過去750年間の豪雨回数とその豪雨強度、毎年の降雪量、および夏季における気温および日射量の変動が定量的に復元され、さらに周辺地域における人間活動に伴う自然環境影響を評価することができる。 これは人新世環境変動アーカイブの精度を飛躍的に向上させることを意味している。これは全地球規模の地球環境の将来予測にとって多くの情報を提示できることができ、その学術的社会的なインパクトは極めて大きい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のため、フィンランドへの渡航ができなかったため生じた。感染の終息をめどに、速やかにフィンランドへ渡航し、現地における試料採取と、古環境復元のための諸分析、研究成果の取りまとめを、トゥルク大学理学部地質地理学教室と共同で実施する。そのための渡航旅費、古環境分析経費を次年度に繰り越す。
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