研究課題/領域番号 |
20K20732
|
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
斉藤 美加 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90235078)
|
研究分担者 |
小林 潤 琉球大学, 医学部, 教授 (70225514)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
|
キーワード | マラリア / 感染症対策 / 強制力 / シチズンサイエンス / 順応的管理 / 行動変容 |
研究実績の概要 |
本研究ではマラリア撲滅の成功の鍵を握ったのサイエンスの力であったという仮説を検証するため、聞き取り調査、文献調査、データ解析、ワークショップによる実践を行う。特にマラリア対策の歴史分析を行い、I期 戦前 II期 戦時中 III期 戦後から1950年まで IV期 1950-1957 移民マラリア V1957-1962 ウイラープラン実施期とし、III期とv期におけるトップダウンとボトムアップの比較を行った。 1.<トップダウン> 科学的管理 III期 八重山出身、台湾医専で博士号にいたる研究を行った二人の科学者(吉野知事、大濱衛生部長)が、政策を決定するリーダーシップと権力を有した時期である。主に、蚊の幼虫対策の時期。罰金を伴う強制力のある取締規則でマラリア対策への住民参加強制と自発的参加のための啓発活動をおこなった。科学をベースとした強い対策により、患者数の激減が見られた。 V期 米軍主導のエビデンスベースのマラリア対策の実行期 米軍は台湾で効果を上げていたDDT屋内残留散布を中心とした計画(ウイラープラン)をたてた。保健所職員作業者へのスパルタ式の指導により作業の徹底をさせた時期 住民参加は要請ベース。 2.<ボトムアップ> 順応的管理 IV期 政権が交代し、リーダーがマラリア撲滅への予算を削減し、情熱をなくした時期。社会と科学の答えのちぐはぐな政策をとり移民を受け入れ、移民にマラリア流行を許してしまう。保健所職員の使命に頼った時期。保健所職員とコミュニティの信頼関係構築時期 3.<史実の実証―現代に生かす>本島北部地域でのガジャンサイエンスクラブによるシチズンサイエンスの実践と行動変容調査を行なった。Covid-19対策比較分析が、史実の実証となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在、Covid-19パンデミックの中、感染症対策におけるサイエンスの重要性、リーダーの意思決定、行動変容、強制力などのキーワードの大規模な実証実験をまさに行なっており、様々な角度からの考察ができている。また、現在の感染症への関心の高まりから、さまざまな学際的複合的ネットワークが形成され、新たな形の調査・研究・発信が可能となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、島嶼地域科学のレジリエンスとバイタリティ研究に参加し、八重山のマラリアの歴史をレジリエンスのキーワードから分析する。2022年八重山マラリア制圧60周年の節目にあたり、60周年記念事業期成に参加し、記念事業として、研究成果を還元する。地域住民との交流、八重山マラリア対策の歴史の偉業を県内外、世界へ発信する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の影響で、国内外、県内離島への出張ができなくなった。予定が崩れ、物品購入ができなくなったため、未使用分がでた。 次年度は、マラリア撲滅60周年記念事業の一環で、研究アウトリーチ活動を予定している。講演会や交流会、出版、論文出版を予定する。
|
備考 |
ストーリーマップ「八重山のマラリア史」はESRIストーリーマップを使用した地図と情報をリンクすることができるソフトを使用して作成したもの。
|