研究課題
本研究は、ドイツが第一次世界大戦前に支配した海外領土のうち東アフリカ植民地(現在のタンザニア・ルワンダ・ブルンジ)を主な対象として、ドイツ側の現地法調査プロジェクトをバイアス分析の手法を応用して考察し、西洋法学の理解枠組、それによって変形された現地法、現地法の固有の層を相互関係のもとに把握することを通じて、グローバル・リーガル・ヒストリーとしてのアフリカ法史研究を開拓することを目的としている。今年度は計画の初年度であり、関連文献を収集して研究状況を把握するとともに、方法的省察と視野の拡大につとめることが、主な作業となった。旧ドイツ領植民地については、歴史学、人類学、地域研究など多様なディシプリンによる研究が特に1990年代以降増加しており、ドイツ本国側の植民地認識に関しても、研究が蓄積されつつある。一方、狭義の法史研究は決して多いとはいえず、本研究の課題である現地法調査を考察する際にも、他の学問分野の成果を参照し生かす必要があることが改めて確認された。また、これも様々な意味でのグローバル・ヒストリーの視角からアメリカ合衆国など英語圏で行われている諸研究の中にも、斬新なものがあり刺激を受けたが、法の問題を扱う際に生じる問題点をも同時に意識させられた。現地法調査プロジェクトの土壌となった19世紀後半から20世紀初めのドイツ法学の展開についても、近年のドイツ学界の研究成果をフォローしたが、当時の学術界におけるドイツ法学の中心性を反映した国際的契機を確認し、本研究課題遂行の基礎を固めた。
3: やや遅れている
新型コロナウィルス感染の世界的拡大により、海外渡航ができなくなったため、ドイツにおける文書館訪問、資料収集、意見交換を行うことができなかった。今年度後半にはポツダムの連邦文書館にて現地法調査アンケート結果について最初の検討を始める予定であったが、延期せざるをえず、その点で遅れが生じている。
世界の新型コロナウィルス感染状況は令和3年度に入っても楽観を許さず、正常化にはなお時間を要すると予想される。文書館所蔵史料や、ドイツの大学図書館所蔵の文献・資料について、訪問調査なしで済ませることは難しいと思われるので、電子データの取り寄せなどで対処できる部分は対処しつつ、渡航機会を待つこととなろう。
ドイツへの渡航とドイツの文書館・大学図書館での調査を予定していたところ、新型コロナウィルス感染の世界的拡大により、実施できなくなったために次年度使用額が生じた。今後、ドイツへの渡航が可能となり次第、使用する予定である。
すべて 2021
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Irene DINGEL, Michael ROHRSCHNEIDER, Inken SCHMIDT-VOGES, Siegrid WESTPHAL, Joachim WHALEY (Hrsg. / Eds.), Handbuch Frieden im Europa der Fruehen Neuzeit , De Gruyter Oldenburg, Muenchen.
巻: 1 ページ: 227-243